【8月17日 AFP】16日に行われたロードレース世界選手権(WGP 2020)第5戦、オーストリアGPのMotoGPクラス決勝で、時速約300キロで走るライバルのバイクを間一髪で回避したモンスターエナジー・ヤマハ(Monster Energy Yamaha)のバレンティーノ・ロッシ(Valentino Rossi、イタリア)が、恐怖のニアミスについて「殺されかけた」と振り返った。

  シュピールベルク(Spielberg)のレッドブル・リンク(Red Bull Ring)で行われたレースでは、9周目にペトロナス・ヤマハSRT(Petronas Yamaha SRT)のフランコ・モルビデリ(Franco Morbidelli、イタリア)とエスポンソラーマ・レーシング(Esponsorama Racing)のヨハン・ザルコ(Johann Zarco、フランス)が接触。

 投げ出された両選手はコーナーを転がり、モルビデリのバイクはロッシのわずか数センチ目の前を通過。無人となったザルコのバイクも、ロッシとそのすぐ前を走っていた同選手のチームメートのマーベリック・ビニャーレス(Maverick Vinales、スペイン)をあとほんの少しで直撃するところだった。

 動揺した様子を見せるも、レース再開後は見事に落ち着きを取り戻して5位でフィニッシュしたロッシは、「モルビデリのバイクに殺されかけた」と怒った。

「ザルコのドゥカティだって、自分から数メートルのところを通り過ぎていったし、非常に危険な瞬間だった」「本当に怖かった。今も動揺している。レース再開はつらかった。キャリアの中で最も危険だった」

「影が見えて、ヘリコプターかなと思ったんだ。レース中にヘリコプターが頭上を飛んで、影ができることはたまにあるからね。でも代わりに『弾丸』が二つ飛んできた」「モーターサイクリストの神様がきょうは助けてくれたと思う。本当に危険だった」

 またロッシは、リスクを省みず「自分たちのバイクがこういうスピードでは弾丸」となることを理解できないMotoGPライダーが多過ぎると主張し、「自分たちは非常に危険なスポーツで戦っているんだ。一緒に走る人にリスペクトの気持ちを持たないといけない」と付け加えた。

「ザルコはこういうことが初めてではない。起きたことは明確だ。ザルコがストレートでオーバーテークした後、フランコに抜き返されたくなかったから彼の前であえてブレーキをかけたんだ」

「だがMotoGPで時速300キロで走る中で、モルビデリは何もできなかった。ザルコが彼の目の前でブレーキをかけた。フランコはなすすべがなかった」

 一方、来季はヤマハのサテライトチームでロッシのチームメートになる可能性もあるモルビデリは、伊スカイ・スポーツ(Sky Sport Italia)に「ザルコは殺人者になりかけた」「時速300キロであんなブレーキをかけるなんて、自分や相手の人たちを大切にしていない証拠だ」と率直に語った。 

 ザルコ本人はクラッシュの原因は分からないと話しているが、間違った行為は何もしていないと主張し、「モルビデリのバイクに押されたと思う。直線で彼をオーバーテークできたことで、すでに前に出ていた。それでブレーキをかけたときに右にそれて、そこでぶつかった」と説明している。

「故意の操作ではない。フランコとバレンティーノには説明したが、二人の選手が完全にやられている姿を見るのは、本当に恐ろしかった」「事故の場面では270キロで走っているべきだった」 (c)AFP