【9月10日 AFP】米国のリチャード・ニクソン(Richard Nixon)元大統領が樹立した共産主義国家・中国との国交は、半世紀に及んで多くの米国民から優れた外交手腕の成果とみなされ、その後も民主・共和両党の歴代大統領が踏襲してきた。

 だが米国の強硬派は今、別の見方を復活させている。マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官から見れば、国交正常化は誤りであり、それは中国をつけ上がらせ、米中間の緊張激化をもたらすお膳立てだったとなる。

 すべては1971年、ニクソン大統領の国家安全保障問題担当補佐官だったヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)氏による極秘の北京訪問から始まった。強固な反共主義者としてキャリアを築いていたニクソン大統領は突然、翌1972年に自ら訪中し、最高指導者・毛沢東(Mao Zedong)主席と会談すると発表し、世界を驚かせた。

■「古いパラダイム」の終わり

 ポンペオ氏は7月、ニクソン大統領の埋葬地でもあるカリフォルニア州南部のリチャード・ニクソン図書館(Richard Nixon Presidential Library)で、中国をこれまでにも増して強く非難する演説を行い、「かつてニクソン大統領は、世界をCCP(中国共産党)に開放したことでフランケンシュタイン(Frankenstein)を作ってしまったのかもしれないと恐れていたが、それが今現実になっている」と述べた。

 ポンペオ氏はさらに「中国とのやみくもな関係という古いパラダイムはもう通用しない」と述べた上で「民主国家による新たな同盟」を呼び掛け、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席については「われわれが認めない限り、中国内外で永遠に君臨する運命にはない」と明言した。

 だが、1970年代の水面下交渉に参加し、20年後に駐中国米大使となったステイプルトン・ロイ(Stapleton Roy)氏は、米国の政策立案者らがポンペオ氏のいう「古いパラダイム」を基本としたことはないという。

 後にウッドロー・ウィルソン国際学術センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)キッシンジャー米中関係研究所(Kissinger Institute on China and the United States)の所長となったロイ氏は、「米国の対中政策が、中国は必ず政治的に自由化されるという甘い期待に基づいていたというのは歴史的に不正確だ」と指摘する。

 ロイ氏によれば、ニクソン氏もキッシンジャー氏も、中国に対する見方は「全く実利的」だった。「1971年、72年のニクソン・キッシンジャー両氏の対中関係打開の最初の目的は、対ソ連冷戦におけるわが国の立場を強化すること、第2にベトナム戦争終結に向けて中国の支援を得ることだった」とロイ氏は語る。「主目的は明白に達成された。2番目はだめだった」