【8月16日 東方新報】大手国有企業「中国華融資産管理」の頼小民(Lai Xiaomin)元会長が、収賄・汚職・重婚の罪で起訴され、その腐敗ぶりが中国で大きな衝撃を与えている。受け取ったわいろの総額は約17億8800万元(約275億円)に上り、中国メディアは「収賄額の新記録」と報道。さらに自宅に重さ3トンの現金や高級車を隠し持ち、多数の愛人を囲い込み、会社で縁故採用を続けるなど、「腐敗のかたまり」という実態が明らかになった。

 頼被告は今年で58歳。中国・天津市(Tianjin)第2中級人民法院(地裁)で11日に開かれた初公判によると、頼被告は2008年から2018年にかけて、中国の金融当局・中国銀行業監督管理委員会弁公庁主任や中国華融資産管理の会長兼共産党書記などを歴任。その地位や職権を利用して、企業や個人から不正に金品を受け取ったという。頼被告は公判で罪を認め、判決は後日に言い渡される。

 頼被告の自宅からは2億7000万元(約41億5441万円)の現金がロッカーなどから見つかった。重さにすると3トンに上る。当局の摘発を避けるための資金で、これも贈賄側に要求して手にした金だった。頼被告はこの場所を暗号で「スーパーマーケット」と呼んでいた。自宅からはさらにベントレー(Bentley)、メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)、トヨタ・アルファード(Toyota Alphard)などの外車や高級腕時計、絵画、黄金なども見つかった。

 中国華融資産管理は不良債権を処理することが主業務だが、頼被告は証券、信託、投資、銀行、先物取引などの子会社を次々と設立し、業務を拡大。会社の幹部は「元会長はとにかく短期の業績を求め続け、3年後や5年後のリスクもお構いなしだった。実際、すぐに資金が焦げ付き始め、不良債権を処理する会社が不良債権を生み出す事態となった。それでも元会長は追加投資をしてその場しのぎをしようとした」と証言する。

 中国メディアによると、頼被告は広東省(Guangdong)の不動産開発プロジェクトで、120件の住宅物件のうち100件余りを不正に取得し、100人の愛人を住まわせていたという。かつての中国王朝の皇帝が妃(きさき)や女官を住まわせていた「後宮」のような状態だった。さらにこの愛人たちを、31社に膨れ上がった子会社の幹部ポストに就任させていた。また、自分の出身地の江西省(Jiangxi)瑞金市(Ruijin)出身者を多く登用し、中国華融の幹部は「経営陣から食堂のスタッフまで元会長の同郷人ばかりだった」と証言している。

 これまでに「収賄額のトップ」といわれていたのは、山西省(Shanxi)呂梁市(Lvliang)の張中生(Zhang Zhongsheng)元副市長だった。1997年から2013年にかけて石炭業の許認可で絶大な権力を握り「呂梁のゴッドファーザー」と呼ばれ、違法に10億4000万元(約160億円)の資産を得たとして、2018年に死刑判決を受けている。

 頼被告の事件は、中国でたびたび起きる汚職の典型的要素が詰め込まれている。まずは「権力の一極集中」。頼被告は国営中国中央テレビ(CCTV)の反腐敗キャンペーン番組で、「私は会社の会長、法人代表、党書記を務めていた。(社内の監査部門の)規律検査委員会書記は私の部下にあたる。だから、誰も私を監督することはできなかった」と自ら語っている。

 さらに、「権色交易(権力と色欲の取引)」の問題。企業側が権力者に女性をあてがい、特別な便宜を図ってもらおうとする行為が今も横行している。汚職で逮捕された役人のうち95%は愛人がいたという調査もある。権力者が自ら愛人を囲う場合も多いが、企業側が「取引」として女性を提供するケースも多い。また、自分の身内として周囲を同郷人で固め、それ以外の人間を排除し、異論を封じ込める手法も目立つ。

 汚職を取り締まる政府機関の中央規律検査委員会・国家監察委員会の幹部は「今回の事件の原因は多岐にわたり、深刻な教訓として受け止めなければならない」としている。(c)東方新報/AFPBB News