【8月14日 AFP】五輪で表現の自由を求める声が高まっているにもかかわらず、オーストラリアの五輪選手の大半は、競技中や表彰式での抗議行動は認められるべきではないと考えているという調査結果が、14日に明らかになった。

 5月に米黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが死亡した事件をきっかけに、世界中で数多くのアスリートが膝をついて「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動を支援していることを受けて、五輪におけるこの問題は改めて精査されている。

 国際オリンピック委員会(IOC)は現在、五輪での「デモンストレーションや政治的、宗教的あるいは人種的な宣伝活動」を禁じている。しかし、米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)のアスリート委員会は、6月下旬にIOCへ書簡を送り、五輪での抗議を禁止するルールの撤廃もしくは改正を求めた。

 こうした圧力が増す中で、IOCは第三者に意見を求め、陸上男子棒高跳びの金メダリストであるスティーブ・フッカー(Steve Hooker)氏が主導するオーストラリアオリンピック委員会(AOC)のアスリート委員会が約500人の現役および元五輪選手に調査を行った。

 すると、80パーセント以上がフィールド上での抗議はパフォーマンスや選手の体験を損なうと回答。そのうち、五輪はアスリートが意見を主張する場ではないとの答えが約41パーセントだった一方で、状況によってはそうすべきだとする考えもほぼ同じ割合だった。

 最も適した方法としては、選手村に設けられたポスティングウオールのような場所や、インタビューの最中もしくはソーシャルメディアを活用するという意見が出た。

 USOPCの書簡は、1968年メキシコ五輪の陸上男子200メートルに出場し、同胞のトミー・スミス(Tommie Smith)氏と共に表彰式で拳を突き上げる有名な「ブラックパワー・サリュート(Black Power Salute)」を行ったジョン・カーロス(John Carlos)氏が擁護した。

 メキシコ五輪での抗議行動には、同種目で銀メダルに輝いたオーストラリアのピーター・ノーマン(Peter Norman)氏も、人権を求める五輪プロジェクト(Olympic Project for Human Rights)のバッジを着けて支援した。同氏はその後、五輪選考会から外され、最近までオーストラリアの五輪の歴史から存在が抹消されていた。(c)AFP