2020.08.25

WATCHES

カルティエ/自由を愛した伊達男の時計は、現代を生きる男が持つべき時計

サントス デュモン/昨年はクオーツ式のSMサイズとMMサイズが登場。そして今年は、自社製のキャリバー430MCを搭載するXLサイズの手巻きモデルが誕生。ベゼルはポリッシュ、ケースはサテンと仕上げを分けることで、メリハリのある輝きが生まれる。サイズがやや大きくなったがケースの厚みは7.5㎜しかないので、シャツの袖にもすっと収まり、着こなしを邪魔することはない。手巻き。18Kピンクゴールド、ケース縦46.6×横33.9㎜、3気圧防水。税別165万6000円。Laziz Hamani © Cartier

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いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。



1904年に製作した世界初の実用紳士用腕時計は、のちに「サントス」として一般発売された。ローマン数字インデックスにレイルウェイ式ミニッツトラックを組み合わせて、視認性を高めている。Vincent Wulveryck, Collection Cartier ©Cartier


ブラジルの富豪の息子として生まれたサントス=デュモンは、パリへと移住。1906年には、ヨーロッパでは初となる飛行機での飛行を行った。Archives Cartier © Cartier


CARTIER

人間誰しも、何にも縛られず自由に旅をしてみたいと思うものだ。しかし残念ながら今は、社会情勢がそれを許してはくれない。それならせめて時計だけでも、自由でありたいではないか。


世紀末のパリに現れた伊達男サントス=デュモンは、気球や飛行機を操り、パリの空を自由に旅した。郊外のレストランに飛行船で乗り付けるのが好きだったという彼の腕元にあったのは、操縦しているときも素早く時間を確認するために、友人の宝石商ルイ・カルティエが製作した可憐な角形ウォッチ。これこそが世界初の実用紳士用腕時計であった。


「サントス デュモン」は1904年に作られたこの時計を、現代的にアップデイトしたもの。新作のXLモデルは、オリジナルと同じく手巻き式ムーブメントを搭載しており、時代を同じくして生まれたエッフェル塔の鉄骨組みの造形美をイメージしたベゼルのビスも継承されている。


2針ノンデイトの角形ドレスウォッチは、正直なところ"実用品"ではない。現在時刻を知るためではなく、今という時間を楽しむために存在している。息苦しい日々が続くからこそ、この時計をつけた時くらいは、自由な時間を楽しみたい。サントス=デュモンのように生きるのだ。


文=篠田哲生
(ENGINE2020年9・10月合併号)

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