【8月12日 AFP】香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕された周庭(アグネス・チョウ、Agnes Chow)氏(23)は、10代から政治活動に身を投じてきた若手の民主派活動家の一人だ。中国当局は今、この世代の活動家らを着々と沈黙させようとしている。

 周氏は10日夜、報道陣のフラッシュを浴びる中、香港に新設された国安法専門の治安機関「国家安全維持公署」の署員らによって手錠を掛けられ、自宅から連行された。国安法が刑事罰を定めている「外国勢力との共謀」の容疑で最初に逮捕された反体制派政治家の一人となった。有罪判決を受ければ、同法の最高刑は無期懲役だ。

 11日夜に保釈された周氏は記者団に「当局に対し、このようなばかげた政治的訴追の停止を求める」と述べた。長きにわたって中国本土の独裁的指導者らやその香港出先機関との対立を繰り返してきた経歴に、今回の逮捕が新たに加わった。

 周氏は自らについて、政治に無関心なカトリック教徒の家庭で育ったと述べている。だが2012年、公立学校への「道徳・国民教育」導入計画に反対する若者主導の運動が立ち上がった。生徒らはこの計画によって、香港の教育が中国本土のように厳しい検閲下に置かれることを恐れていた。15歳だった周氏はこの運動に加わった。

 生徒らによる大規模な座り込みが展開された結果、この計画は見送られた。これは抗議運動によって香港政府が譲歩を迫られた、まれな事例となっている。

 周氏はこの運動を通じ、自分と同世代の10代の活動家、黄之鋒(ジョシュア・ウォン、Joshua Wong)氏と出会っている。

 2年後の2014年、黄氏と周氏を含む学生らは反政府デモ「雨傘運動(Umbrella Movement)」の中心的存在となった。この運動は香港での普通選挙実施の約束を中国政府がほごにしたことに端を発し、79日間にわたって座り込みやデモなどの抗議行動が展開された。

 雨傘運動は平和的に行われたが、成果は実らなかった。一方、運動の熱気が高まる中で、新たな民主派政治家の世代が形成された。

 高度な自治を有する金融都市・香港に対し、中央政府は支配力を強めようとしていたが、この新たな民主派世代は中央政府をいら立たせる存在となり、中国共産党政権はますます締め付けを強化していった。