【8月12日 AFP】サッカー欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)のフィナーレと言えば、サポーターが大挙して開催都市に詰めかけるのが通常だったが、今回は違う。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が続く中、それでも「ファイナルエイト」の舞台となるポルトガル・リスボンを訪れようと決めたファンは、去年までとは全く別の「妙な」経験をすることになる。

 今回の危機に対する異例の対策として、サッカー界で最も大きなお金が動くクラブチーム最高峰の大会は、史上初めて準々決勝以降の対戦が一発勝負で、一つの都市で集中開催される。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は今も欧州で広がっているため、試合はすべて無観客で、厳格な指針に基づいて実施される。

 それでも、大会の雰囲気だけでも味わおうと、テージョ(Tagus)川河口の街を訪れるファンは一定数いる。

 パリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)と準々決勝を戦うアタランタ(Atalanta)のファンで、伊ベルガモ(Bergamo)から来た27歳の男性は、「僕らにとって、シーズン最大の大一番だ」と話した。リスボンには友人2人と来ていて、スタジアムには入場できないため、近くのバーで試合を観戦する予定だが、「妙な雰囲気だよ。街はあまり人けがないみたいで、バーも早くに閉まる」と男性は話す。

 一方、PSGのレプリカユニホームを着た16歳のサポーターの少年は、両親との休暇で「たまたま」リスボンに来ているそうだ。「チャンピオンズリーグの雰囲気はどこにもないね」と少年は話すが、それでも「通りで『頑張れ、パリ』と言われたから、ここにもサポーターはいるみたいだ」という。

 チャンピオンズリーグのためリスボンを訪れる観光客の数について、警察は見通しを示していないが、地元の警察署長によれば、街の各所で警察官が「しっかり目に入る」ようにはするという。

 ポルトガルのマーケティングスクールIPAMは、無観客開催ながら、チャンピオンズリーグ目的の観光客は合計1万6000人に達する可能性があると試算する。IPAMのダニエル・サー(Daniel Sa)氏は、決勝に向けては5000人以上が集まると話すが、これは「控えめ」な数で、「リスボンの感染状況がここ数週間で改善し、飛行機の便数も増えている」ことから、 最終的な数はもっと多くなると信じている。

 8月23日に決勝が行われるエスタディオ・ダ・ルス(Estadio da Luz)は、レアル・マドリード(Real Madrid)対アトレティコ・マドリード(Atletico de Madrid)の2013-14シーズン決勝の舞台で、また2019年のUEFAネーションズリーグ(UEFA Nations League 2018-19)準決勝と決勝では、ポルト(Porto)とギマラエス(Guimaraes)に多くの国外ファンが集まった。

 しかし23日のエスタディオ・ダ・ルスでは、6万5000人収容の無人のスタジアムに選手らの声がこだまするだろう。新型ウイルスの感染拡大を防ぐため、ポルトガルでは全国で制限が敷かれており、中でも5月のロックダウン(都市封鎖)解除以降、感染拡大のペースがとりわけ速いリスボン近郊では、特に厳しい措置が取られている。

 10人以上が集まるのは禁止で、これは他の欧州各国の20人よりも厳しい。公共の場でのアルコール消費も禁止で、商店やカフェはチャンピオンズリーグのキックオフ時間である夜8時には店を閉めなければならない。

 警察も「スポーツがあるからといって、施行中のルールに例外を認めてよいということにはならない」と話している。(c)AFP/Alexis HONTANG, Thomas CABRAL