【8月11日 AFP】香港民主派のメディア王、黎智英(ジミー・ライ、Jimmy Lai)氏(71)が10日、国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕されたことを受け、同法の下で香港の言論の自由が狭められている状況について新たな非難が巻き起こっている。

 黎氏には国安法が禁じる外国勢力との共謀の疑いが掛けられている他、同氏が経営するメディア企業「壱伝媒(ネクスト・デジタル、Next Digital)」にも詐欺の疑いが掛けられている。

 警察当局は10日、国安法によって新たに国家安全保障に対する侵害と規定された外国勢力との共謀の疑いで、黎氏を含む10人を逮捕。その中には黎氏の2人の息子や、若手民主活動家の周庭(アグネス・チョウ、Agnes Chow)氏、英ITVニュース(ITV News)を中心に活動するフリージャーナリストで元活動家の李宗澤(ウィルソン・リー、Wilson Li)氏らが含まれている。

 黎氏と面識のある米国のマイク・ポンペオ(Mike Pompeo)国務長官は、同氏の逮捕を受けたツイッター(Twitter)への投稿で、中国当局が「香港の自由を切り崩し、香港市民の権利をむしばんでいる」ことを示す「さらなる証拠」だと批判した。

 香港の警察当局は逮捕当日の深夜に行った会見で、逮捕者は外国の制裁を求めてロビー活動をしたグループの一部だと述べた。

 同日は、黎氏が所有する現地紙「蘋果日報(アップル・デーリー、Apple Daily)」本社に家宅捜索が入った。同紙の記者らは警官約200人がオフィスに踏み込み、手錠を掛けられた黎氏を連行する様子を生配信した。同紙は「香港の報道の自由は今、瀬戸際にある」と述べ、報道活動を続けると表明した。

 香港外国記者会(The Foreign Correspondents' Club, Hong Kong)は今回の家宅捜索について、国安法は報道の自由を侵害しないと保証した中国政府および香港政府の言質を「覆す」もので、「暗たんとした新段階」の前兆だと懸念を表明した。(c)AFP/Jerome Taylor and Su Xinqi