【8月11日 AFP】十代の間で動画共有アプリ「ティックトック(TikTok)」ブームを巻き起こした中国人富豪の張一鳴(Zhang Yiming)氏(37)はITの第一人者で、若い世代のトレンドを見極めて同アプリを世界的に大ヒットさせた。だが同氏の独創性は、ティックトックの運営企業を収益性の高い米市場で生き残らせるには十分ではないようだ。

 張氏は、世界に対してティックトックは安全保障上、何の問題もないアプリだと保証しようと努めながら、同時に、自国内では欧米諸国の要求に屈しているわけではないことをアピールして自らのイメージを守るという多大な圧力を受けている。

 同氏のスタートアップ企業、バイトダンス(ByteDance、字節跳動)がリリースしたティックトックのフィードには、髪染めのコツからダンスのステップ、日常の面白動画など、ありとあらゆる短編動画が万華鏡のように次々に現れる。

 元プログラマーの張氏はバイトダンスによってIT業界の多くの大物を追い越し、一躍、中国の最富裕層に仲間入りした。

 東京を拠点とする「秋田みちのくキャピタル(Akita Michinoku Capital)」のアナリストによると、バイトダンスは2019年の収益を前年の約74億ドル(約7800億円)から2倍以上に増やし、グーグル(Google)の親会社アルファベット(Alphabet)やフェイスブック(Facebook)に「太刀打ちできる競争相手」となった。

 国内外で一連の買収が続いたが、バイトダンスの飛躍のきっかけはティックトックだ。3年前にリリースされた同アプリはこれまでに世界で20億回以上ダウンロードされている。海外市場の二大トップシェアを占めていたのはインドと米国だ。

 バイトダンスは今や30か国で6万人以上の従業員を擁し、張氏は3月、さらに約4万人の増員計画を発表した。中国の電子商取引大手アリババ(Alibaba、阿里巴巴)の雇用数に迫る勢いだ。同社はさらに6日、欧州ユーザー向けでは初となるデータセンターをアイルランドに開設する計画を発表した。