【8月9日 AFP】インド洋の島国モーリシャス沖で座礁した貨物船から大量の燃料が漏出している事故で、同国警察は9日、この貨物船に立ち入って捜査する方針を発表した。同国では、透き通った海に燃料が流失し、生態学的な惨事が悪化する中、除去作業が続けられている。

 商船三井(Mitsui OSK Lines)が運航するパナマ船籍の「わかしお(MV Wakashio)」から漏れ出した燃料は、絶滅危惧種の生き物たち、また手付かずのサンゴ礁やマングローブ林を誇る海洋保護区に流入。モーリシャスのプラビン・ジャグナット(Pravind Jugnauth)首相が「環境における緊急事態」を宣言し、国際的な支援を訴えた。

 海岸沿いにはボランティア数百人が集結し、潮の流れに運ばれる燃料を必死に食い止めようと、間に合わせの遮断物を数キロにわたってつなぎ合わせて設置した。ボランティアの多くが全身黒色の油まみれになっていた。

 しかし、濃い汚泥がすでにモーリシャスの手付かずのサンゴ礁や海洋生物の生息環境、白い砂浜に押し寄せており、同国経済が依存している沿岸の繊細な生態系に空前の被害を引き起こしている。

 最も深刻な被害を受けた地域の一つであるマエブール(Mahebourg)の環境保護活動家は、「人々が自分たちの手で対処する必要があると認識した。われわれは、われわれの動物相、そして植物相を守るためにここにいる」と述べた。

 警察は9日、事故の捜査の一環としてモーリシャスの裁判所が出した捜索令状に基づき、「わかしお」に立ち入って航海日誌や通信記録などを押収する方針を発表。

 警察当局者によると、インド国籍の船長(58)が捜査のために警察に同行する予定だという。船の座礁時に無事に船外へ避難した乗組員20人は、現在監視下に置かれている。

 そうした中、フランスがモーリシャス近くの仏海外県レユニオン(La Reunion)から災害支援のために海軍の艦艇と軍用機、専門家チームを派遣。これに対してジャグナット首相は謝意を表明した。

 商船三井は、船舶付近にオイルフェンスを設置する試みは高波の影響で成功しなかったと発表。複数のヘリコプターが重油3800トンとディーゼル燃料200トンの一部を陸地へと運んでいる。

 航空写真には、座礁した船の周囲の広大な範囲の青い海に、真っ黒な染みが広がっている様子が捉えられており、同地の有名なラグーンや入り江に暗い影が差している。

 「わかしお」は先月25日、国際的に重要な湿地の保全を目的としたラムサール条約(Ramsar Convention)の指定地域に含まれているポワントデスニー(Pointe d'Esny)で座礁。

 世界有数の美しいサンゴ礁を誇るモーリシャスの人口130万人は、食料面でも観光業でも海に大きく依存している。

 生態学者らは、船がさらに破損し、さらなる大量の漏出を引き起こして、同国経済の根幹を成す沿岸部に破滅的な被害をもたらしかねないと危惧している。(c)AFP