【8月8日 AFP】インド洋の島国モーリシャスで座礁した貨物船から燃料が漏出している事態を受け、フランス当局は8日、仏海外県レユニオン(La Reunion)から航空機および技術アドバイザーを同国へ派遣したと発表した。モーリシャスの首相は、日本企業が所有するパナマ船籍の貨物船からの燃料流出によって悪化する、名高いサンゴ礁や海への汚染を食い止めるため、緊急支援を訴えていた。

 商船三井(Mitsui OSK Lines)が運航するパナマ船籍の「わかしお(MV Wakashio)」は先月25日に座礁。海が荒れていることから、燃料流出を食い止める作業が難航しており、モーリシャス南東の沖合に広がるターコイズブルーの海への汚染が続いている。

 同国のプラビン・ジャグナット(Pravind Jugnauth)首相は7日夜、「環境における緊急事態」を宣言。グリーンツーリズムの目的地として同国が培ってきた名声の礎となるサンゴ礁やラグーン(潟)、白砂の岸辺へと、燃料が弱まることなく漏出し続けている。

 同首相は、「わかしおが沈むことは、モーリシャスにとって危険を意味する。わが国は座礁した船を再浮上させる技術もノウハウも持っていないので、フランスとエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)同国大統領に支援を要請した」と述べた。

 マクロン大統領は8日、モーリシャス当局が同国にとって空前の規模の環境災害と呼ぶ出来事への援助を行うため、近隣に位置するレユニオン島から隊員や装備品が駆り出されていると説明。ツイッター(Twitter)に「生物の多様性が危機的状況にさらされているとき、緊急に行動する必要性がある。モーリシャスの国民に寄り添う」と投稿した。

 わかしおはディーゼル燃料200トンとバンカー燃料3800トンを積載していたが、国際的に重要な湿地の保全を目的としたラムサール条約(Ramsar Convention)の指定地域に含まれているポワントデスニー(Pointe d'Esny)で座礁。乗組員21人は安全に船から避難した。

 モーリシャスの環境省は今週、最悪の事態を確認し、船体のひび割れから燃料が染み出し始めたと発表。油膜が付近を漂う中、ボランティアらが仮設のオイルフェンスを設置するために海岸へと駆け付けた。

 航空写真には、座礁した船の周囲の広大な範囲の青い海に、真っ黒な染みが広がっている様子が捉えられており、付近の岸辺やラグーンに広がるビーチや、繊細な生態系を抱えるマングローブ林がべとべとした濃い燃料に覆われている。

 別の日本企業が所有するこの船を運航している商船三井の広報担当者は8日、AFP東京支局に対し、座礁した船からヘリコプターによって燃料を岸辺へと空輸しているものの、悪天候のため問題が複雑化していると述べた。

 現場を訪れたジャグナット首相は、今週末にかけて天候が悪化すると予報されていることから、状況がさらに悪化することへの危機感を表明。「今週末に天気が再び崩れるため、心配だ。船に何が起きるかわからない」と述べた。

 生態学者らは、船がさらに破損し、さらなる大量の漏出を引き起こして、同国経済の根幹を成す沿岸部に破滅的な被害をもたらしかねないと危惧している。

 世界有数の美しいサンゴ礁を誇るモーリシャスの人口130万人は、食料面でも観光業でも海に大きく依存している。(c)AFP