【8月7日 AFP】サウジアラビアの元情報機関高官が6日、米首都ワシントンの連邦裁判所で開かれた裁判で、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)が、反体制派ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏がトルコで殺害されてから間もない2018年10月に自分を暗殺させ、遺体を解体させようとしたと述べた。

 元情報機関高官のサード・アルジャブリ(Saad Aljabri)氏は、ムハンマド皇太子が自分の死を望んでいるのは、皇太子とライバル関係にあり、治安機関のトップを務めていたムハンマド・ビン・ナエフ前皇太子(Prince Mohammed bin Nayef)と親しい関係にあることと、露見すれば米政府とサウジ政府の緊密な関係に悪影響を及ぼすムハンマド皇太子の行動を詳しく知っているからだと説明した。

 2017年6月にムハンマド皇太子が王室の権力を掌握し、ムハンマド・ビン・ナエフ氏を皇太子から外して自宅軟禁にした際、アルジャブリ氏はすでに国外にいた。

 アルジャブリ氏は、サウジの首都リヤドにいる子供たちが旅行制限を課された後、自分もナエフ前皇太子と同じ運命をたどることを恐れて帰国を拒否し、息子が住むカナダに渡った。

 それ以来、サウジ政府は国際刑事警察機構(インターポール、InterpolICPO)を使ってアルジャブリ氏の身柄を確保しようとしたが、失敗に終わった。そして、2018年10月2日にカショギ氏が殺害されてから13日後に、アルジャブリ氏が裁判でムハンマド皇太子の「個人的な傭兵(ようへい)集団、タイガー部隊(Tiger Squad)」と呼んだ一団がカナダに入った。

 アルジャブリ氏によると、その一団には、カショギ氏の遺体を処分したグループと同様に法医学専門家が含まれ、法医学の機器も持ち込まれたという。カショギ氏の遺体は発見されていない。

 アルジャブリ氏は、カナダの治安当局が殺害計画を阻止したが、自分の命はまだ狙われており、ムハンマド皇太子は聖職者から自分の殺害を認めるファトワ(宗教令)を得たと述べた。

 今年3月には、サウジに居住するアルジャブリ氏の子供2人が何者かに連れ去られた。今もその消息は分かっていない。

 裁判は、米国の外国人不法行為賠償請求法(Alien Tort Claims Act)と拷問被害者保護法(Torture Victim Protection Act)に基づき、超法規的殺害を実行しようとしたとして、ムハンマド皇太子の他、身元が明かされていない11人を含む23人を相手取って起こされた。

 アルジャブリ氏は裁判で、「重度の精神的苦痛」や不安、高血圧症などの病気に対する損害賠償と、被告らに対する懲罰的損害賠償を求めた。

 在ワシントンのサウジ大使館はAFPに対し、現時点でこの訴訟についてのコメントはないと述べた。(c)AFP