■7月には国境地帯で緊張高まる

 ベイルート市民の多くは、1982年のイスラエルのレバノン侵攻に苦い思い出を持っている。イスラエルは2000年までレバノン南部を占領し、またイスラエルとレバノンのイスラム教シーア派(Shiite)組織ヒズボラ(Hezbollah)の最後の大規模衝突である2006年の戦闘は1か月に及び、レバノン側では民間人を中心に1200人、イスラエル側で兵士を中心に160人が死亡した。

 またイスラエルは先月27日、北部の国境でヒズボラが越境攻撃を試みたと発表したが、ヒズボラは関与を否定した。両者はお互いを激しく非難し合い、ここ数か月比較的落ち着いていた国連が画定したブルーライン(停戦ライン)沿いで緊張が高まった。

 この1週間前の7月20日にはシリアの首都ダマスカス南部で、イスラエルによるとみられる攻撃によりヒズボラ戦闘員を含む5人が死亡した。

 だがこの時の攻撃について専門家らは、双方とも新型コロナウイルスで打撃を受けており、新たな軍事衝突は望んでおらず、事態の激化を回避すると予測していた。

 4日の大爆発が起きる前、レバノンは既に新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)と、1975~1990年の内戦以来最悪となる経済危機に見舞われていた。

 ベルギー王立高等国防研究所(Royal Higher Institute for Defence)のヒズボラの専門家、ディディエ・リロイ(Didier Leroy)氏は、レバノンでは汚職がまん延し、機能不全に陥っている政治制度に対する抗議活動が昨年から行われており、ヒズボラは主にレバノンの混乱の収拾に集中していたと指摘する。

 一方のイスラエルでも、経済危機はそこまで深刻ではないが、景気悪化や新型コロナの感染拡大抑制に苦慮するベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相に対する抗議活動が週ごとに拡大している。

 イスラエルのヘブライ語日刊紙イディオト・アハロノト(Yediot Aharonot)の著名コラムニスト、ナフム・バルネア(Nahum Barnea)氏は、「政策決定者らは2006年から難局に直面している。彼らは第3次レバノン戦争には突入したくないのだ」と述べた。(c)AFP/Guillaume Lavallee, Claire GOUNON