■「国家安全維持公署」の新設

 中国政府は今回、香港での国家安全保障をめぐる特に重大な犯罪事案では管轄権を持つこと、同政府機関の職員が香港で公に活動することを初めて明言した。

 これは、共産党の影響下にある中国の裁判所と、返還以降の香港の司法制度との間にあった法的な防壁を打ち破るものとなった。中国政府の機関職員は今回、香港に新たな事務所を構えるに至っている。

 国安法はさらに、香港の警察内部に新たな治安機関「国家安全維持公署」を創設させた。この治安機関にはより広い監視権限、さらにはネット上の投稿を検閲したり削除したりする権限が与えられた。

■教育機関への影響力

 中国政府は、昨年の抗議運動で大きな役割を果たしたと考えられる教育機関を統制する意思についても半ば公にしている。

 国安法は、法に抵触するとみなされる書籍の撤去に学校や図書館が動かざるを得ない状況をつくった。

 また香港の教育局長も学校内外でのすべての抗議運動を禁止した。これを受けて先月27日、過去に平和的抗議行動を主導したことがあるとして有罪となった法学部教授の戴耀廷(ベニー・タイ、Benny Tai)氏を香港大学(University of Hong Kong)が解雇している。

 同氏は、中国政府からの圧力に屈したとして大学側の動きをけん制し、「香港での学問の自由は終わった」と強く非難した。

■ソーシャルメディアへの投稿で逮捕

 国家安全維持法の施行により、香港市民の多くはソーシャルメディアの利用停止、または批判的内容を含んだ自らのアカウントの「整理」を表明した。

 国家安全維持公署は先月末、新法に違反する内容をソーシャルメディアに投稿したとの容疑で、16歳から21歳の学生4人を逮捕している。治安機関新設以降初の逮捕となった。

 当局によると4人は最近、香港の独立を推進し、「香港共和国」の建設を目指す団体の立ち上げを宣言していたという。

■立候補資格の取り消し

 当局はまた、9月初頭に予定されていた議会選挙への現職4人を含む候補者12人の立候補資格を取り消した。当局はこれら候補者の政治的見解が容認できないと断言し、失格となる政治的姿勢を詳細に説明している。

 失格者の中には黄之鋒氏が含まれていた。最近の一連の動きについて黄氏は、香港の民主化運動に対する「これまでで最大の弾圧だ」と非難している。(c)AFP/Jerome TAYLOR / James LEGGE