■新型ウイルス患者の避難

 一方、ベイルート最古の医療機関の一つ、聖ジョルジュ病院(St. George Hospital)はもっと不運だった。天井は崩れ、割れたガラスが降り注いだベッドの上に電気の配線が垂れ下がっていた。

「うちの病院は診療を停止した」と医局長のエイド・アザール(Eid Azar)氏は言った。「今の経済状況では、修復にどのくらい時間がかかるかも分からない」

 スタッフは夜明け直前までかかって患者を避難させ、機材や書類を運び出した。患者の中には、非常に慎重な移送が必要な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療中の患者20人も含まれていた。

 野外病院と化した中庭では、血まみれの白衣を着た医師らが、爆発のショックに陥った人々を手当てしていた。「まさに次々と負傷者がやって来る中で、患者でいっぱいの病院を丸ごと避難させるほど難しいことはない」とアザール氏は述べた。「病院のスタッフ自体負傷していて、私たちは自分の病院で働く人々も移送しなければならなかった」

 爆発によってエレベーターは止まっていたため、医師らは9階分の患者を一人ずつストレッチャーに乗せて運んだ。電気も水道も止まっている中、看護師らは大きなリスクを冒しながら全力で救命措置を提供した。

「病院の電気は通常24時間ついている。それが真っ暗闇になった」という臨床専門看護師のララ・ダヘル(Lara Daher)さん。「昨晩は携帯電話のライトを頼りに負傷者の縫合手術を行った。どうやってやったのか分からない。こんな状況は初めてです」

 映像はベイルート市内の病院に搬送され手当てを受ける負傷者ら、4日撮影。(c)AFP/Layal Abou Rahal