【8月5日 AFP】(図解追加)レバノン当局は、首都ベイルートで発生した大規模爆発について、硝酸アンモニウムが原因となった可能性を指摘している。肥料として広く用いられている無臭の結晶、硝酸アンモニウムは、ここ数十年で多くの産業事故を引き起こしている。

 2013年には、米テキサス州の肥料工場で爆発し、15人が死亡。これは故意に起爆されたとみられている。一方、2001年に仏トゥールーズ(Toulouse)の化学工場で発生し、31人が犠牲になった爆発は事故だった。

 米オクラホマシティー(Oklahoma City)では1995年、米連邦政府の建物が破壊され、168人が死亡する攻撃が発生した。この際に使用された爆弾の生成には、2トンの硝酸アンモニウムが使われた。

 レバノンのハッサン・ディアブ(Hassan Diab)首相は、首都ベイルートの港湾地区の倉庫に長年にわたり保管されていた、2750トンの硝酸アンモニウムが爆発したと発表した。

 硝酸アンモニウムを燃料油と混合すると、建設業界で使用される強力な爆発物になる。またアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)のような武装集団によって、即席爆発物として用いられることもある。

 農業では、硝酸アンモニウムの肥料は顆粒(かりゅう)状で使われる。水に素早く溶け、植物の生育に欠かせない窒素が土に放出される。

 米ロードアイランド大学(University of Rhode Island)で化学を専門とするジミー・オクスリー(Jimmie Oxley)教授は硝酸アンモニウムについて、通常の保管状態であれば、極めて高温にならない限り発火しにくいとしている。

 オクスリー氏は「硝酸アンモニウムの反応を誘発した小さな爆発があったと想定している。その小さな爆発が事故だったのか故意だったのかは、私は聞いていない」と述べた。

 危険性はあるものの、硝酸アンモニウムの正規の使用は農業や建設業において不可欠だとオクスリー氏は言う。

「爆発物なしでは今日の世界は存在せず、硝酸アンモニウムの肥料なしでは人々に食料を届けられない」「硝酸アンモニウムは必要だ、ただ使い方に十分な注意を払わなければならない」と述べた。(c)AFP