【8月5日 AFP】ジャイアントパンダは自然保護のシンボルとして最もよく知られる動物の一つかもしれないが、パンダを保護する取り組みは、生息地を共有する大型哺乳類を守れていない──こう指摘する研究論文が3日、英科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」で発表された。この研究によると、激減しているのはヒョウといった大型の捕食動物だという。

 研究者らはヒョウ、ユキヒョウ、オオカミ、ドール(アカオオカミ)が1960年代以降、保護下にあるジャイアントパンダの生息地の大部分で、ほぼ消滅してしまったことを突き止めた。

 調査を率いた北京大学(Peking University)生命科学学院(School of Life Sciences)の李晟(Sheng Li)氏は、今回の結果が「ジャイアントパンダの保護は、こうした大型捕食動物類の保護には不十分であることを示している」と指摘している。

 論文では、1950年代から1970年代にかけての調査データを、2008年から2018年にかけて設置されたカメラおよそ8000台から収集された情報と比較。

 その結果、ジャイアントパンダの保護区の81%からヒョウが姿を消したほか、38%からユキヒョウが、77%からオオカミが、95%からドールがいなくなったという。こうした捕食動物は、密猟や森林伐採、病気といった脅威に直面していることが判明した。

 論文の執筆者らによると、一番の難題はパンダの行動圏が最大で13平方キロメートルにとどまる可能性があるのに対し、先の捕食動物4種は100平方キロを超える範囲で行動し得ることだという。

 李氏はAFPの取材に対し、通例は約300〜400平方キロ前後というパンダの各保護区の面積が、「ヒョウやドールなどの大型捕食動物の存続可能な個体数」を支えるには狭すぎると説明。

 ただ同氏は、パンダの保護が小型捕食動物、およびキジといった鳥類などの保護の一助となっていると指摘し、「大型捕食動物を守れていないことが、その他多くの生き物をしっかり守っているという、効果的な傘の役割としてのジャイアントパンダのパワーを帳消しにするものではない」と述べた。(c)AFP/Kelly MACNAMARA