■米史上初の女性大統領への道?

 当選した場合バイデン氏は就任時78歳で、自らのことは次へつなげるための存在だと考えていることは明らかだ。バイデン氏が選ぶ副大統領候補は、おそらくもっと若く、実質的に民主党の次の大統領候補と目される人物となり得る。バイデン氏が女性を副大統領候補に選ぶと宣言していることを考えると、その女性は仕事ぶりにかかわらず、歴史をつくることになるだろう。

 米史上、大政党の副大統領候補となった女性は、1984年のジェラルディーン・フェラーロ(Geraldine Ferraro)氏と2008年のサラ・ペイリン(Sarah Palin)氏の2人だけで、どちらもホワイトハウスまではたどり着けなかった。

 バイデン氏が勝利すれば、同氏が選ぶ副大統領候補は米史上初の女性副大統領となり、さらに米史上初の女性大統領となる可能性も生まれる。

■選挙を通じてはわずか9人

 副大統領は上院議長であると憲法で規定されており、採決が可否同数の場合に決済票を投じるという重責がある。より非公式なレベルでは、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権下のディック・チェイニー(Dick Cheney)氏のように陰の実力者と呼ばれることもある。

 だが一般的に思われているように、副大統領職が大統領を目指す上で最適な踏み台になるかというと、実はそうは言い切れない。

 米史上、大統領になった副大統領はわずか14人だ。しかもうち9人は、選挙で選ばれたわけではない。暗殺されたジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)の後任を含め大統領が任期中に死亡した例の他、ウォーターゲート(Watergate)事件によりリチャード・ニクソン(Richard Nixon)大統領が辞任しジェラルド・フォード(Gerald Ford)氏が就任した例がある。

 副大統領を務めた後に選挙で勝利し大統領になった例は、1989~1993年に大統領を務めたジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)氏で途絶えている。

 大統領とは異なり、人々の記憶に残る副大統領は少ない。近年では前述したチェイニー氏以外では、ビル・クリントン(Bill Clinton)政権で不可欠の存在だったアル・ゴア(Al Gore)氏の名前が挙げられるだろう。ゴア氏は2000年の大統領選では僅差で敗れたものの、環境活動家として新たに名をはせるようになった。

 そして今、ジョー・バイデン前副大統領がいる。

 バイデン氏がトランプ氏に勝利するという世論調査の結果が正しければ、バイデン氏は今後何年にもわたって歴史の教科書に不可欠な存在となるだろう。(c)AFP/Sebastian Smith