【8月2日 AFP】(更新)米国で初めて顔面移植手術を受けたコニー・カルプ(Connie Culp)さんが死去した。57歳だった。カルプさんが約12年前に手術を受けたオハイオ州のクリーブランド・クリニック(Cleveland Clinic)が7月31日、ツイッター(Twitter)への投稿で公表した。死因は明らかにしていない。

 カルプさんは2004年、夫による銃の発砲で鼻や頬、口蓋、右の下まぶたを失った。夫はその後銃で自殺を図ったものの未遂に終わり、7年服役した。

 カルプさんは30回の外科手術を経て、2008年にクリーブランド・クリニックで顔面移植手術を受けた。移植手術は極めて複雑で、2日間にわたり22時間を要した。

 2児の母であるカルプさんは家庭内暴力について発言し、自身と同じように顔面移植手術を受けたコネティカット州のチャーラ・ナッシュ(Charla Nash)さんらを励ました。ナッシュさんは、ペットのチンパンジーに襲われ負傷した。

 顔面移植は事故や暴力の被害者や、まれな遺伝性疾患の患者が受けることが多く、呼吸や食事、発話といった基本的な行為や、笑顔や眉をひそめた表情による非言語的コミュニケーションの回復に役立つ。ただ、移植された器官の拒絶反応を抑制する闘いが生涯続きかねず、世界中で手術件数は数十例にとどまる。拒絶反応を抑える免疫抑制剤は、感染症やがんにかかりやすくなるリスクを伴う。

 テキサス州のダラス・ウィーンズ(Dallas Wiens)さんは2008年11月に教会の屋根で移動クレーンを使って作業していたところ頭が高圧線に触れて重度のやけどを負い、2011年に米国初の全顔面移植手術を受けた。視力は失われたものの、現在は電話で話すことができる上、嗅覚も取り戻している。

 世界で初めて全顔面移植手術を受けたフランス人のイザベル・ディノワール(Isabelle Dinoire)さんは、画期的な手術から11年後の2016年4月にがんで死去した。医師団は、ディノワールさんの体が移植組織に拒絶反応を示したと説明した。(c)AFP