【8月1日 Xinhua News】新型コロナウイルスの流行収束に伴い、中国湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)に活気が戻ってきた。同市洪山区の街道口にあるカレー店「頂屋咖喱」には、来店客一人一人に日本語であいさつして回る男性の姿があった。

 嶋田孝治さん(72)は感染症の流行期間中も同市にとどまり、テレビを通じて「武漢加油」(武漢がんばれ)と声を上げ、人々を励ました日本人として知られる。自身が10年間経営するカレー店もすでに営業を再開し、今は以前と変わらない生活を送っている。

 嶋田さんは今年の初め、カレー店の店長、胡丹(Hu Dan)さんに誘われて、同市江夏区の農村で春節(旧正月)を過ごした。もともとは数日間の「田園生活」を楽しみ、休みが終わってから市内に戻るつもりだった。しかし、感染症の発生で、嶋田さんの予定は大幅に狂ってしまった。胡さん一家は相談の末、嶋田さんにもうしばらく残ってもらうことにした。 

 同市について話が及ぶと、子どもがいない嶋田さんは「ここにはわが家のような安全さと温もりがある」、死後は「遺灰を中国の海にまいてほしい」と語る。

 感染症流行のため、江夏区の農村に滞在していた当時、地元の人々から続々と支援の手が差し伸べられた。街道弁事処や村の幹部からは米などの生活物資が、村民からはカミソリなどの生活用品が届けられた。

 嶋田さんは感染症の流行期間中の出来事を振り返り、何度も涙をこぼしながら「武漢の人たちの精神に敬服している。みなさんの配慮に感動した」と述べた。

 同市から市外・省外に通じる交通ルートの規制が4月8日に解除され、嶋田さんはようやく市内に戻ることができた。5月19日には社区(コミュニティー)で無料の核酸検査を受けた。

 嶋田さんは「武漢市は今、とても安全。市内では約1千万人を対象としたウイルス検査が実施されているので、安心できる」とした上で、世界の人々に中国と武漢の本当の姿を見てほしいと語った。(c)Xinhua News/AFPBB News