【8月1日 AFP】英国と米国で医療従事者の新型コロナウイルス陽性率が一般の人よりも高いことを示す論文が、医学誌ランセット・パブリック・ヘルス(The Lancet Public Health)のサイトに7月31日付で掲載された。研究者らは、マスクなどの保護具の提供における「制度的人種差別」によって、マイノリティーの医療従事者のリスクが大きくなっていると懸念している。

 研究チームは、米英の医療従事者ら約10万人が3月24日〜4月23日の期間にスマートフォンアプリ「COVID Symptoms Study」で自己申告した情報を調査。アプリの一般ユーザー10万人当たりの感染者数が242人なのに対し、最前線の医療従事者では同2747人に上ることが分かった。

 研究チームは、医療従事者が検査を受けやすい状況にあることを考慮して、最前線で働く医療従事者が新型コロナウイルスの検査で陽性になる可能性は、一般のアプリユーザーよりも3.4倍程度高くなると推定した。

 黒人、アジア人、他の人種・民族少数派(BAME)の医療従事者が新型コロナウイルスの検査で陽性になる確率を基礎疾患も考慮に入れて推定したところ、一般の人の5倍近くになるという結果になった。

 さらに研究では、マスクや手袋、防護服といった防護具を十分に持っていないと答えた医療従事者が陽性になる確率は、十分にあると答えた人の1.3倍だったことも分かった。

 米マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)の医師で論文の上席著者のアンドリュー・チャン(Andrew Chan)氏は、今回の研究結果は十分な個人防護具(PPE)を提供することの重要性を明確に示しているとともに、制度的人種差別によってPPEの入手に不平等が生じ、最前線で働くマイノリティーの医療従事者の感染リスクが高くなっている可能性を示唆していると説明した。

 PPEを再使用する必要がある、または十分なPPEが提供されていないと答えた人の割合は、非ヒスパニック系の白人医療従事者で約4人に1人(27.7%)だったのに対し、BAMEの医療従事者では約3人に1人(36.7%)だった。

 もっとも研究者らは、このデータは世界的にPPEが不足していた時期に収集されたものであり、現在のリスクは変化している可能性があるとしている。

 この研究は、主に英国に住む約210万人のアプリユーザーを調査し、うち9万9795人が前線で働く医療従事者だと自己申告していた。調査期間中にこれらに人々に行われた新型コロナウイルスの検査のうち5545回で陽性という結果になった。(c)AFP