【7月31日 AFP】米プロバスケットボール(NBA)は30日、新型コロナウイルスの影響で中断されていたシーズンが再開され、試合前の国歌演奏時には選手たちが膝をついて「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動への支援を示した。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)で3月に活動が停止していたNBAは、フロリダ州オーランド(Orlando)のディズニー・ワールド(Disney World)内につくられた安全な「バブル」環境の下、22チームによって4か月ぶりに再開された。

 NBAによる前代未聞の新企画が開始されたこの日、会場のESPNワイド・ワールド・オブ・スポーツ・コンプレックス(ESPN Wide World of Sports Complex)では無観客で2試合が行われ、1試合目ではユタ・ジャズ(Utah Jazz)がニューオーリンズ・ペリカンズ(New Orleans Pelicans)に106-104で勝利した。

 この試合で最初と最後の得点を決めたのは、ジャズのフランス人プレーヤーであるルディ・ゴベール(Rudy Gobert)だった。同選手はリーグで最初の新型コロナウイルス陽性者となり、シーズン中断のきっかけとなっていた。

 2試合目では、レブロン・ジェームズ(LeBron James)を擁するロサンゼルス・レイカーズ(Los Angeles Lakers)が、ロサンゼルス・クリッパーズ(Los Angeles Clippers)に103-101で競り勝った。

 両試合では、「Black Lives Matter」の文字が記されたTシャツを着た選手たちが、米国歌「星条旗(The Star-Spangled Banner)」演奏の際に一致団結して膝をついていた。

 レイカーズのスター選手であるジェームズは試合後、「今こそこのプラットフォームを利用して、多くの支持とたくさんの愛を世界中に広めるときだ」「俺たちは社会で起きていることを理解している。そしてこのNBAのプラットフォームを利用し、選手、コーチ、そして組織として、その上に力強く立ち上がっていく。これは良いスタートだ」とコメントした。

 こうした選手たちの行動につながったのは、5月25日にミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが警察の拘束下で死亡した事件を受けて、全米中で人種差別や警察の暴力が省察されるようになったことだった。

 フロイドさん死亡事件への抗議デモは6月に国内の全50州に広まり、NBAでも多くの選手たちがそれに加わったことで、リーグは再開を控えて社会的正義を訴える動きが高まっていた。

 各コートには「Black Lives Matter」の大きな文字のスローガンがペイントされていた一方で、選手たちが着ているユニホームには、「息ができない」「今こそ正義を」「教育改革」などのメッセージを記すことが許可されている。

 膝つきは反人種差別活動における団結を示す象徴的なジェスチャーとなっており、フロイドさんが死亡して以降、世界のスポーツ界ではここ数か月にわたり選手たちがこの行動を見せている。

 そうした中で、ジェームズは選手たちの活動が弱まることはないだろうと強調し、「俺たちはたくさんの人種差別や社会的不正、そして警察の暴力と闘っている。それは俺たちが人々に聞いてもらいたいことだ。俺たちは耳を傾けていて、それを止めることはできない」「この2か月間やってきたように、これからも俺たちはアクセルを踏み続けていく」と語った。

 NBAはこれまで長い間、試合前の国歌演奏時には選手に起立を義務付ける規則を設けてきたが、リーグのアダム・シルバー(Adam Silver)コミッショナーはこの日、処分を受ける選手は誰もいないと明言した。

「社会的正義を訴える平和的な抗議活動として、選手たちが団結するのを尊重する。こうした異例の状況において、国歌演奏時に起立を求める長年の規則は強要されない」 (c)AFP