【7月31日 AFP】中国に設置された米プロバスケットボール(NBA)アカデミーで、若い選手らが身体的な虐待にさらされ、教育を受ける機会を奪われていると、米スポーツ専門チャンネルESPNが報じた。同局はこれらの施設を、「アスリートの過酷キャンプ」と形容している。

 NBAは2016年から世界各地でアカデミーを展開し、中国でも新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)、山東(Shandong)省、浙江(Zhejiang)省の3か所に開校。これらの施設での身体的虐待に関する報告が、複数のコーチから寄せられたとされる。

 NBA側は、新疆ウイグル自治区のアカデミーとの提携は昨年終了したとしているが、山東省と浙江省にある中国国営スポーツ施設でのアカデミーの運営は続けている。

 ESPNの調査取材によると、元コーチの一人は、中国人コーチが若い選手の顔にボールを投げ付け、「選手の腹部を蹴った」と証言したという。

 NBA副コミッショナーのマーク・テイタム(Mark Tatum)氏はESPNに対し、虐待の報告は「一握り」だとしながらも、アカデミーでのプログラムについて「再評価」していると説明した。

 かつて中国の民間バスケットボールスクールでテクニカルディレクターを務め、NBAからアカデミーの評価依頼を受けたブルース・パーマー(Bruce Palmer)氏は、中国でのアカデミー展開には「根本的な欠陥」があると指摘する。

 パーマー氏は、主な問題はNBAの従業員らが中国当局の指揮下に置かれ、NBAが中国人のエリート選手らと連携するのを阻止されていることにあるとみている。元コーチの一人は「われわれは基本的に、中国政府のために働いていた」と振り返っている。

 また、教育がアカデミーの中心的な柱の一つに据えられているにもかかわらず、正規の学習機会が提供されていないとも伝えられている。

 ESPNは新疆ウイグル自治区にあったアカデミーの窮屈な生活環境の詳細を報じており、これによると選手2人用の部屋に最大10人が収容され、選手たちは二段ベッドで寝ていたという。

 毎日数回のトレーニングがあり、課外活動は皆無に等しく、13歳といったまだ幼い選手にも指導者がつかず放置されていたことも頻繁にあったという。

 報道の中で専門家の一人は、中国のスポーツコーチの間では体罰が横行していると指摘している。(c)AFP