【8月10日 AFP】有名人、ブランド、指導者、一般の人など誰もが、不快な行動を非難する「キャンセル・カルチャー」に巻き込まれている。批評家らは、このような非難はやりすぎで、社会の二極化に拍車をかけると指摘する。

 物議を醸すツイートだったり動画だったり何であれ、人々はすぐさまソーシャルメディアで説明を要求し責任を追及するが、これらが「炎上」につながる可能性もある。

「キャンセル・カルチャー」は、個人や企業が不快なことを言ったり行ったりした場合、謝罪するか視界から消えるまで支援しないことで大勢が一致団結することをいう。

 ファンタジー小説「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズを手掛けた英作家J・K・ローリング(J.K. Rowling)さんは、トランスジェンダーについてのコメントが「キャンセル・カルチャー」の標的となった。

 ブランドもまた、顧客を失わないように対応を迫られている。

 例えば、米食品大手マーズ(Mars)の米飯ブランド「アンクル・ベンズ(Uncle Ben's、ベンおじさん)」や、同業の米ペプシコ(PepsiCo)の傘下企業が製造販売するパンケーキ粉やシロップのブランド「アント・ジェマイマ(Aunt Jemima、ジェマイマおばさん)」は、黒人をマスコットキャラクターとしていたため人種差別的だとされた。

 米スタンフォード大学(Stanford University)のリチャード・フォード(Richard Ford)教授(法学)は、「ソーシャルメディアの活動の一部は、建設的で合法」であるとしながらも、オンライン上の「反射的な反対運動」については警告している。

「ツイッター(Twitter)での行動は簡単だ。誰かを攻撃したり、渦中の人の解雇や追放を望む嘆願書を拡散したりするのに数秒もかからない」

 7月初旬に米月刊誌「ハーパーズ・マガジン(Harper’s Magazine)」のウェブサイトに掲載された、キャンセル・カルチャーが議論を制限すると苦言する公開書簡には、人文科学分野の約150人が署名している。フォード教授もその一人だ。