【7月30日 AFP】フランスで今週、核融合を実証するために設計された巨大な実験装置の組み立て作業が始まった。正式な認可を受けてから14年後の組み立て開始だ。核融合は太陽の光や熱を生み出す反応で、地球上でも安全かつ存続可能なエネルギー源となる可能性がある。

 国際熱核融合実験炉(ITER)として知られる装置の建設地で、仏南部にある小さなコミューン(自治体)のサンポールレデュランス(Saint Paul-les-Durance)には、ここ数か月の間に世界中から装置の構成部品が集まってきていた。科学者チームは今後、「世界最大のパズル」と表現される実験装置、ITERを完成させるための組み立て作業を慎重に進めることになる。

 この実験施設の目的は、核融合エネルギーを持続的かつ安全に商業規模で生成できることの実証だ。最初の実験は2025年12月に開始される予定となっている。核融合とは、太陽や他の恒星のエネルギー源で、軽い原子核同士が融合してより重い原子核に変わる際に膨大なエネルギーが放出される現象を指す。

 課題はこのエネルギーから電力を取り出す装置の構築だ。装置は、核融合炉内の適切な位置に設置し、強力な磁場で制御する必要がある。

■低リスク

 ITER計画は2006年、米国、ロシア、中国、英国、スイス、インド、日本、韓国、27の欧州連合(EU)加盟国の35か国が共同で立ち上げた。

 ITERの国際研究チームは、「核融合は安全で、燃料の量が極めて少なく、(従来型の原子力発電所のような)炉心溶融(メルトダウン)による暴走事故の物理的な可能性がない」としている。

 さらなる利点は、核融合反応の燃料である重水素と反応制御で必要なリチウムが豊富に存在していることだ。これらは、この先何百万年も供給可能と考えられており、国際チームは、「パイナップル1個分くらいの量の核融合燃料は、石炭1万トンに相当する」と説明している。

 ITERの「トカマク(Tokamak)型」核融合炉には、全部で約100万個の構成部品が必要となる。その一つは非常に強力な超電導磁石で、4階建てビルほどの高さがあり、1個の重量が360トンにも上る。