【8月5日 東方新報】中国・西安市(Xi`an)の秦岭野生動物園で行われたサーカスショーで、飼育員が熊に針を刺すような行為があったとしてインターネットで「虐待だ」と騒ぎになった。中国の動物園では動物を使ったショーは珍しくないが、「動物園は生き物の大切さを伝える場所であり、虐待をする場所ではない」と議論を呼んでいる。

 騒動の発端は、インターネットで「秦岭野生動物園の熊虐待事件」というタイトルの動画が拡散したことだった。熊を二本脚で立たせて板の上で踊らせるショーで、団員が座っていた熊の顎付近を小さな突起物でつつき、飛び上がらせた様子が撮影されている。

 ネットで「虐待だ」と批判が高まると、動物園側は今月22日、「熊をつついた道具は針でなく、プラスチック棒だった」と釈明しつつ、「担当者を解雇し、熊の演技は当分中止する。皆さまの指摘に感謝し、今後さらに適切な指導に努める」と表明した。それでもインターネットでは「動物園のサーカスにノーと言おう!」と書き込みが相次いでいる。

「動物に芸を仕込むには、演技をしたらエサを与える『ごほうび方式』と、強制的に芸をさせる『虐待方式』がある。小さい時から虐待をすれば、動物の野性味を奪って従順にさせることができるが、こんなやり方を許してはいけない」
「いや、手法は関係ない。そもそも動物園とは、動物の生態を知り、自然の大切さを学ぶためにある。どんな形でも、動物の本来の動きではない芸を仕込むことはやるべきではない」

 こんな形で「サーカス虐待論争」が続いている。

 これまでも動物園のサーカスで虐待が行われているという指摘はたびたび起きている。飼育員に動物愛護の精神が足りないことが第一の要因だが、地元自治体が動物園を観光の目玉として収益を上げようとしていることも背景にある。熊をいつでも二本脚で立たせるよう、奴隷のように前脚を鎖で縛って立たせているショッキングな映像がネットで拡散したこともある。

 中国政府は2013年、中国動物園協会の協力を得て「全国動物園発展要綱」を発表。「わが国の動物園と外国の先進的な動物園には大きな差がある」と認めつつ、「いくつかの地方自治体は正しい知識が欠如しており、動物に演技をさせる商業主義に偏り、社会に悪影響を与えている」と指摘している。

 政府の指導や市民の動物愛護意識の高まりを受け、広州動物園が24年間続けてきた動物サーカスショーを2017年に廃止するなど、各地の動物園が動物を「見せ物」にするショーを取りやめている。

 こうした流れに対し、「ならば、サーカスの定番・ライオンの火の輪くぐりも虐待になるのではないか」というように、加熱する世論にブレーキをかける意見もある。日本でも「水族館のイルカショーは虐待ではないか」「いや、合理的配慮がされていれば問題はないし、子どもたちが生き物に興味を持つきっかけとなる」という議論が行われている。

 動物園の動物をどのように扱うか。それは「人間と動物との関係をどう考えるか」という根本的な命題を含んでおり、今後も議論は続いていきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News