【7月29日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は27日夜、ツイッター(Twitter)上で、誤解を招く医療情報や陰謀論を広めたり、米国の感染症研究の権威を批判したりする行為を繰り返した。トランプ氏は先週、新型コロナウイルスの流行を深刻な問題として捉える姿勢を打ち出していたが、再び態度を一変させた形だ。

 ツイッターは、トランプ氏がリツイートした動画を削除するという異例の措置をとった。削除された動画は、医師のグループが米国人に対し、マスクは不要であり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンを服用すれば治ると訴える内容で、フェイスブック(Facebook)上からはすでに取り下げられていた。

 ツイッターは28日、この動画の投稿は同社の「COVID-19の偽情報に関する方針」に違反すると表明。同社はさらに、同じ内容の動画をツイッターに投稿したトランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア(Donald Trump Jr)氏に対し、12時間の投稿禁止処分を科した。ジュニア氏は11月の大統領選で再選を目指すトランプ氏の選挙陣営の主要メンバーでもある。

 問題の動画に登場する医師らの中心的存在となっているステラ・イマヌエル(Stella Immanuel)医師は、魔女の存在を信じる右翼説教者としての顔も持ち、「神の戦斧(せんぷ)」(戦斧には「気性の激しい女性」の意味もある)を自称している。

 イマヌエル医師は動画で、新型ウイルス感染症はヒドロキシクロロキン服用で治ると主張しているが、これは誤りであり、同感染症の特効薬は今のところ存在しない。ヒドロキシクロロキンの効果については当初議論が交わされたが、今では新型ウイルス感染者の治療に有効との証拠はなく、むしろ患者に害を及ぼす恐れがあるとの見方が一般的となっている。

 トランプ氏は今回の連続投稿でさらに、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長について最近広まっている右翼陰謀論もリツイートした。この陰謀論では、ファウチ氏が11月の大統領選でトランプ氏に打撃を与えるため、新型ウイルスの感染拡大に加担したとされる。

 トランプ氏はつい1週間前の会見で、感染拡大が続く新型ウイルスについてこれまでとは一線を画す真剣な姿勢を見せており、それを踏まえると今回の一連のツイートでの変貌ぶりは顕著だ。(c)AFP/Sebastian Smith