【7月30日 東方新報】中国・福建省(Fujian)石獅市(Shishi)は繊維業やアパレル業、製靴業のブランド企業、製造工場、卸・小売店など大小8000以上の会社が集まり、「服と靴の都」と呼ばれている。新型コロナウイルス感染症の拡大で一時は大きな打撃を受けたが、中国で新しい販売スタイルとして定着している「インターネットライブ販売」で危機を乗り越えた。

 新型コロナウイルスの影響が最も深刻だった今年1月、石獅市では人の移動や接触はできないため商品の直接取引は困難となり、海外への輸出も停止。経営破綻する会社も相次いだ。

 そこで地元の企業200社が集結し、インターネットを通じて1000種類もの商品を販売する「2・22オンラインライブ販売フェスティバル」を2月に開催。1か月間で10.8億元(約163億円)もの売り上げがあった。さらに大手ネットショップサイト「天猫(Tmall)」や、ショートムービーアプリの「抖音(Douyin)」「快手(Kuaishou)」などに次々と進出し、5回の大型フェスティバルなどを通じて市内全域の企業で285億元(約4297億円)の売り上げをもたらした。

 石獅市の「青創オンライン販売基地」の責任者林喆(Lin Zhe)さんは「ブランド企業はいうまでもなく、中小工場、小売店もライブ販売を始めた」と話す。

 ある靴の製造工場では、カメラで工場内の製造工程を撮影してライブ中継した。大きな音を立てて稼働する機械、活発な生産ライン、明るく照らし出された倉庫。ライブ中継をした余智明(Yu Zhiming)さんは「視覚へのインパクトが強く、注目度は非常に高い。通常のネット販売より注文が多い」と手応えを語る。

 石獅市の強みは、商品のデザインから工場の製造、配達まで、完全な産業チェーンを形成していることだ。ネットで商品の発注を受けてから、デザイン、製造、発送までの全行程をわずか3時間で終えることも可能。各企業が競争して共倒れになるのでなく、生産能力や注文、データを共有して注文を振り分けており、共存共栄を図っている。

 午後9時ごろ、石獅市内の「青創城国際ネット売買センター」は最も忙しい時間帯を迎える。相次ぐ注文を受け商品の配送をする人の流れが絶えず、貨物トラックがひっきりなしに出入りしている。石獅市は「製造と卸売りの街」から「ライブ販売シティー」へと変貌した。

 黄春輝(Huang Chunhui)市長は「今後もさらにコストを下げて効率的なライブ販売網を構築し、石獅市を発展させていきたい」と話している。(c)東方新報/AFPBB News