【7月28日 People’s Daily】それぞれの農家が持っているわずかな土地を「銀行」に預け、まとまった土地でビジネスを始め、その収益の一部を利子のように毎年、土地の所有者に払う。そんな「エコロジー銀行」のシステムが、面積の8割を森林が覆う中国福建省(Fujian)南平市(Nanping)で着実に成果を収めている。

 閔江(Ming River)の水源に近い南平市光沢県(Guangze)は水質の良い地表水(河川、湖沼、貯水池などの水)が43億立方メートルにのぼる。河川やため池周辺の土地の所有者は小規模でちらばっている。2018年に設立された「エコロジー銀行」はそれら所有者から土地を預かって一括管理し、レジャー会社を誘致して釣りビジネスを開始。釣り場スポットを3か所、渓流釣りのルートを5か所設け、多くの釣り客を引き寄せている。釣りの大会も開催し、中国有数の釣りの名所として成長しようとしている。南平市自然資源局の王冲局長は「生態銀行を通じて、『資源』を『資産』に変えることができた」と胸を張る。

「水」がビジネスになれば、「林」もビジネスになる。面積の76%を森林が占める南平市順昌県(Shunchang)は2018年末に「森林エコロジー銀行」を興した。村民の夏六華(Xia Liuhua)さんは0.6ヘクタールの杉林を持つが、夫に障害があり、一人娘は長期の出稼ぎをしているため、林の管理ができていない。森林エコ銀行が設立されると、夏さんは林を預ける最初の「顧客」となり、「森林通帳」を手に入れた。その後、多くの森林を一括管理する運営センターが人工林の育成、キノコの栽培などを手がけ、森林の平均収益は以前より50%アップした。夏さんは今後20年間、毎年3720元(約5万6000円)を受け取り、契約が満期となった後は管理コストを差し引いた収益の6割を受け取ることができる。

 エコ銀行の分野は、天然の自然だけに限らない。

 南平市建陽区(Jianyang)は「陶芸エコロジー銀行」の開設準備を進める。所有者から集めた土地で、陶磁器づくりにふさわしい粘土や高陵土の埋蔵量を調査し、陶芸ビジネスを検討している。南平市武夷山(Wuyi Mountain)では「文化エコ銀行」を設立。市内11村の独自文化や貴重な文化財を一括管理し、ビジネスを展開する。

 2019年、南平市で農業と観光の収入はそれぞれ600億元(約9060億円)を超え、こうした「グリーン産業」が南平市の主力となっている。自然や文化がエコロジー銀行を通して資産となり、人々の生活を潤している。(c)People's Daily/AFPBB News