【7月28日 AFP】北朝鮮はこの数か月、国内には新型コロナウイルスの感染者は一人もいないと主張してきたが、同国国営朝鮮中央通信(KCNA)は26日、感染疑い例が発生したと伝えた。感染が疑われる人物は韓国から戻って来た脱北者とされており、北朝鮮はこの機に乗じ韓国政府を非難しているとの見方をアナリストらは27日、示した。

 KCNAによると、南北を隔てて厳重に防備されている非武装地帯(DMZ)を越えて戻って来た人物が新型ウイルスに感染している疑いがあることが判明し、韓国との軍事境界線沿いにある北朝鮮側の都市、開城(ケソン、Kaesong)を封鎖したという。

 北朝鮮は、貿易相手国で外交的な支援も受けている隣国・中国で初めて新型ウイルスの感染者が確認され、世界中に感染が拡大したここ数か月、国内感染者は一人もいないと主張し続け、専門家の間では疑問視する声が上がっていた。

「北朝鮮は、すでに新型ウイルスが国内で流行している事態や、今後、隔離措置が失敗した場合の非難をかわすために、戻って来た脱北者の存在を利用しようとしているのかもしれない」と、米政府の元北朝鮮アナリスト、レイチェル・ミニョン・イ(Rachel Minyoung Lee)氏はAFPに指摘。

「北朝鮮が韓国側の手薄な警備を追及する可能性がある」「さらに、韓国が故意に脱北者を北朝鮮に送り返して、新型ウイルスを拡散させたと主張するかもしれない」と述べた。

 また、非政府組織(NGO)「国際危機グループ(ICG)」の韓国問題専門家、ドゥヨン・キム(Duyeon Kim)氏はツイッター(Twitter)に、北朝鮮は韓国から感染者が流入したのを非難することで、韓国政府からの援助を「今なら堂々と、おおっぴらに受け入れられるようになった」と投稿。「(北朝鮮は)脱北者は国家の裏切り者というイメージを発信することもできた」と述べている。