【7月30日 AFP】公開が待ち望まれていた英国議会の報告書が21日に公開されたが、国内の分断を招いた2016年の英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)に関する国民投票を含め、同国の政治にロシアが干渉しているとの疑惑は確認できなかった。

 だが、ロシア富裕層が英社会の上層において、いかに不可欠な存在となっているかは明らかになった。この中には、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)ロシア大統領と親交の深い人物も含まれている。

 反汚職を訴える活動家らは長年、英国と英金融機関が世界中の資金洗浄(マネーロンダリング)に利用されていると非難してきた。

 独立系反汚職団体「トランスペアレンシー・インターナショナルUK(Transparency International UK)」の調査員、ベン・カウドック(Ben Cowdock)氏はAFPの取材に対し、首都ロンドンの高級不動産にロシアから不審な資金がつぎ込まれており、その額は10億ポンド(約1360億円)に上ると話した。このためロンドンは「ロンドングラード(Londongrad)」と呼ばれているという。

 報告書をまとめた議会の情報安全保障委員会(ISC)は、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)現政権を含む歴代政権が、これらの資金源を深く追求することを「積極的に避けてきた」と指摘している。

 またISCは、与党・保守党を筆頭に複数の政党に多額の寄付をし、PR会社や法律事務所を使って党幹部らとの接触機会を得ていたと強調した。

 ISCは報告書で、「英国に対するロシアの影響は『新常態』となっている」「プーチン氏と密接なかかわりがあるロシア人の多くが、富豪であるがゆえに受け入れられ、英実業界や社交界に深く溶け込んでいる」としている。

 保守党とロシア人のつながりに関する疑惑も再浮上している。英高級紙タイムズ(Times)は先週、同党の議員14人がロシアとつながりのある複数の人物から政治資金を受け取っていたと報じた。

 記事によるとこの中には、16万ポンド(約2200万円)の寄付をした、夫がプーチン政権で副大臣を務めた経験があるリュボーフィ・チェルヌーヒン(Lubov Chernukhin)氏が含まれており、同氏はジョンソン氏やデービッド・キャメロン(David Cameron)元首相とテニスをしたこともあるという。

 保守党の元委員長、ブランドン・ルイス(Brandon Lewis)氏は、寄付は「適切に申告されている」と指摘。寄付をしているのは英国市民であり、「われわれは外国人からの資金は受け付けない」と述べた。(c)AFP/Veronique DUPONT