【7月28日 Xinhua News】「チベット族チャン族刺しゅう」は「チベット族の織物とクロスステッチ刺しゅう」と「チャン族刺しゅう」の併称で、国家級無形文化遺産「チベット族の織物とクロスステッチ刺しゅう」の伝統技法の伝承者、楊華珍(Yang Huazhen)さん(63)が10数年前に作り上げた新たなスタイルとして知られる。中国四川省(Sichuan)アバ・チベット族チャン族自治州(Ngawa Tibetan and Qiang Autonomous Prefecture)小金県(Xiaojin)にあるチベット族の村出身の楊さんは、今もなお、家伝の技法を守り続けている。

 2008年5月12日に起きた汶川地震(四川大地震)の後、被災した人々が刺しゅうの技法を身に付ければ仕事につながると考えた楊さんは、新聞記者の仕事を辞め、お針子18人とともに省都・成都市(Chengdu)で刺しゅう商品の販売を始めた。

 自身の経営する「藏羌繍苑」では、女性被災者に刺しゅう技術のトレーニングを提供し、完成した商品を会社で販売している。民族色あふれる商品はたちまち評判となった。

 14年にはコスメブランド「シュウウエムラ」を取り扱う化粧品メーカー、日本ロレアルから、新作のクレンジングオイル2種類のパッケージデザインを受注。「エスニックな雰囲気で」という希望により、緑茶エキスが配合された商品には「生々流転」を表すツバキのデザインを、八つの植物成分が配合された商品には植物8種類の他、「永遠」と「堅固で力強いもの」を象徴するチベット仏教の法具、金剛杵をあしらったデザインを考案し、メーカーの好評を得た。

 15年以降は毎年、「香港国際ライセンシングショー(Hong Kong International Licensing Show)」に出展し、6年連続で契約を獲得している。米国のスターバックスコーヒーやオランダのゴッホ美術館、香港のヘアケアブランド「these」、フランス郵政公社などに作品が採用されてきた。

 楊さんはこれまで58人の弟子を育成し、2008年から延べ4千人に刺しゅう技術のトレーニングを実施してきた。ここ数年、弟子と共に同省のチベット族やチャン族、イ族の集中居住地にある村落に住む伝統芸能の伝承者らを訪問。継承の危機にある伝統技法を記録し、保護していきたいとの考えを伝えている。(c)Xinhua News/AFPBB News