【10月16日 AFP】シリアでピスタチオ農家を営むファディ・マームード(Fadi al-Mahmoud)さん(40)は、はさみを片手に農園を回りながら胸を膨らませている。何年にもわたって続いていた戦闘が落ち着き、初めての収穫なのだ。近くでは政府軍による地雷除去作業が行われている。

 数年の間、国内で別の場所に避難していたマームードさんは今年に入り、ハマ(Hama)県北部のマーン(Maan)村に戻ってきた。村は戦闘で荒れ果てていたが、「農園さえあれば、私は大丈夫」とマームードさんは語る。

 ハマ県は長い間、シリアの主要産業だったピスタチオ生産の中心地だった。数年にわたりイスラム過激派と反体制派勢力の支配下にあったが、今年初めにシリア政府軍が制圧した。

 戦況が落ち着きを見せると、マームードさんをはじめ多くの農家の人々が戻ってきた。中東地域で愛されているピスタチオが今季、復活することを願っている。

 剪定(せんてい)ばさみと小さなのこぎりを使って木の手入れをするマームードさんは、休憩しながら「ピスタチオの木は、ハマの田園地帯に呼吸をもたらす肺なのです」と語った。

 2011年に内戦が始まる前、シリアのピスタチオ生産は年間最大8万トンを誇った。主にサウジアラビアやレバノン、ヨルダンや欧州へ輸出されていた。

 しかし農業・農地改革省によると、何年にもわたる激しい戦いでピスタチオ産地のハマ県やアレッポ(Aleppo)県、イドリブ(Idlib)県への立ち入りが難しくなったことで、内戦中は生産量が半分以下に激減したという。

 マームードさんの農園も「木の枝が枯れ、至る所に塹壕(ざんごう)や地雷があった」という。「内戦中の損失の埋め合わせを、できるようになるといいのだが」

 戦況は落ち着いても、反体制派やイスラム過激派が残した対人地雷や不発弾で、周囲の土地には危険が潜んだままだ。農業・農地改革省ピスタチオ局のハッサン・イブラヒム(Hassan Ibrahim)氏はAFPに対し、「地雷などを一掃するためのチームを派遣した」と語った。(c)AFP/Maher al-Mounes