【7月25日 東方新報】中国の母なる河・長江(Yangtze River)の魚が年々減少するなか、昨年から農業農村省と財政部は「長江流域重点水域禁漁・保障制度実施方案」を打ち出し、今年から本格的な長江禁漁がスタートしている。だが、密漁根絶までの道は遠く、レストランでは今なお、長江の希少な魚が提供されている。

 農業農村部などが出した「方案」によれば、長江の本流と重要支流で2020年末までに全面的に10年にわたる禁漁を実施する。沿岸の漁村ではこの方案に従って、禁漁規則が導入され始めている。

 この禁漁令施行に当たって、当初重視されたのは漁民の保障問題だ。だが漁民は高齢化が進んでおり、船などの資産売却費なども合わせれば、おおむね引退漁民の生活の保障工作は順調なようだ。工人日報(Workers' Daily)によればこのほど長江沿岸の漁村、重慶市(Chongqing)永楽鎮(Yongle)陳家村(Chenjiacun)のある漁民が14.5万元(約222万円)の禁漁保障を受け取った。この漁師は「長江にも休息が必要だ。禁漁令が出たことは、私の人生の転機になった」と禁漁への理解を示した。

 だが、鮮魚の販売を行う農貿市場などでは、その後も「長江鮮魚」の販売が続いている。禁漁令が施行されても、市場で需要があるため、一部漁民以外の人間も含めて、珍しい長江の魚や水生生物を密漁して販売しているのだ。中には違法な電気漁を行うケースもある。しかも一部密漁者は地元の法執役人と結託しているという。

 長江航運公安局重慶分局によれば今年6月末までに、すでに40以上の違法漁事件を摘発し、80人以上の容疑者を逮捕しているという。漁政部当局はすでに省レベルで長江漁業に対する集中取り締まりを展開し、違法な漁具など1000件近くを押収し、100件以上の違法漁業事件の取り調べを行った。だが、長江における密漁現象はまだ根絶できていない。

 密漁は、漁業資源を実際に漁獲する者、運搬輸送する者、そして販売する者などがかかわり、すでに違法利益ネットワークが形成されている。多くの鮮魚販売業者と監督管理当局がそのネットワークに入っている。
 ある漁政執法専門員は「個人から個人への販売がこっそり行われており、一部のレストランで今も長江水産品が売られている」と打ち明けた。

 問題の一つは、長江保護の重責を担う漁政部の人材不足だ。江蘇省(Jiangsu)を流れる長江400キロ余りにおいて、密漁取り締まりの資格がある専門員はわずか217人。うちベテランの専門員は100人だ。

 長江魚政の力不足を補うために、江蘇省は引退漁民を漁業資源保護員として雇用し、漁業保護チームをすでに試験的に立ち上げて運用している。重慶では、ハイテク情報機器の活用を強化、監視カメラやドローンによる監視パトロールを重点水域で展開するなど、各地当局が取り締まりへの工夫を凝らしている。

 公安部と農業農村部の合同取り締まりキャンペーンもこのほど展開された。市場監督管理総局のテレビ電話会議では最近、市場で売られる長江水産物の取り締まりについての具体的な対応が議題となった。会議では、日常的に五つの禁止項目について監視管理強化が要請された。長江水産物の加工品生産・購入、各市場での卸売り、飲食店での提供、ネットショップでの販売、メディアでの広告の五項目について、一切を禁止するという。

 絶滅危機種の中華チョウザメやジギョ、スナメリ、ヤマノカミといった珍しい魚や水生生物が生息する長江だが、乱獲と開発の両方で、すでに長江生態系は崩壊の危機に直面している。漁民から市場、広告、末端のレストラン、そして消費者に至るまで長江禁漁の意義と生態保護への理解が浸透しないことには、いずれ長江から魚はいなくなってしまうだろう。(c)東方新報/AFPBB News