【7月23日 AFP】野良犬のイジーはカタールの荒れ地で保護された時、ひどく脱水していた。かろうじて立つことはできたが、死の淵にいた。

 イジーはドイツに住む家族に迎え入れられる予定だが、すべての野良動物がそれほど幸運なわけではない。イジーを保護した動物シェルター「ポウズ・レスキュー(Paws Rescue、以下ポウズ)」は、今後ペットの遺棄が急増する可能性があると警告している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による経済的不況で、駐在員らが帰国の途につくためだ。

 駐在員はカタールの人口275万人の9割を占める。ポウズは7年前、英国人駐在員によって設立された。共同創設者アリソン・コールドウェル(Alison Caldwell)氏は、助けを必要としている動物が増えていると語る。「私たちにできることは何もない。本当に」

 ポウズの収容能力は、猫60匹と犬30匹ほど。統計はないものの、同国の野良動物は推定数万匹いるとポウズは見積もっている。

 また、パンデミックで新しい家族への動物の引き渡しも難しくなっている。イジーは2月に保護され、4月にはドイツ人の一家が引き取りを決めていた。しかし、当局が新型ウイルスの蔓延(まんえん)を封じ込めるために制限を課したことで、旅客機の運航は停止した。

 ポウズは「フライト・バディ」と呼ばれるボランティアの助けを借りている。フライト・バディとは、動物を制限超過手荷物として新たな家族の元へと運んでくれる、旅客機の乗客のことだ。航空貨物としてペットを輸送すると1600ドル(約17万円)かかるところ、フライト・バディを利用すると300ドル(約3万2000円)強で済む。しかしこのシステムが機能するためには、乗客が自由かつ頻繁に移動できる必要がある。

 ポウズによると、パンデミックの初期、ペットがウイルスを広めるのではないかと恐れる飼い主が、シェルターに動物を預ける動きがあったという。ポウズの共同経営者ヘスター・ドリューリー(Hester Drewry)氏は、移動が再開する7月や8月ごろには動物たちが国外に出られるのではないかとの期待を示しつつ、「妙な時代だ」と語った。

 映像前半は救出当時の野良犬のイジーや荒れ地にいる他の野良犬たち、2月撮影・提供。一部は撮影日不明。後半はポウズの施設で保護されている犬や猫、6月撮影。(c)AFP