【7月21日 東方新報】「梅雨」という言葉は中国で生まれ、長江(Yangtze River)の中・下流域で晩春から初夏にかけて梅の実が熟す頃に降る雨が由来とされる。その長江の中・下流域で6月から豪雨が続き、大規模な洪水被害が起きている。中国の歴史は洪水との戦いとの歴史でもあるが、今回は「80年に一度の洪水」とも言われている。

 被害は広範囲にわたり、安徽省(Anhui)、浙江省(Zhejiang)、福建省(Fujian)などに及んでいる。江西省(Jiangxi)にある中国最大の淡水湖・ハ陽湖(Poyang Lake)の水位が観測史上最高の22.6メートルに達するなど、30か所以上で観測史上最高水位を記録。各地で堤防が決壊し、大型ホテルが転覆した船舶のように斜めに傾いていたり、住宅街が「陸の孤島」と化したり、これまでにない被害が起きている。死者は140人を超え、洪水の影響を受ける人は4000万人近い。経済損失は700億元(約1兆732億円)という推計も出ている。

 中国では古代の伝説上の皇帝・堯(Yao)、舜(Shun)の時代から黄河(Yellow River)の洪水に悩み、治水に成功した禹(Yu)が舜から皇帝の座を受け継いでいる。長江流域でも洪水はひんぱんに発生し、紀元前3世紀には現在の四川省(Sichuan)でかんがい施設の都江堰(Dujiangyan)が建造され、岷江(Min River)の洪水災害を改善し農業の発展をもたらした。今では「都江堰市」と自治体の名前となり、かんがい施設は世界遺産に指定されている。

 長江流域は記録にある限り、紀元前から現在まで200回以上の洪水災害が発生している。10年に一度は起きるペースだ。特に梅雨の時期は、長江上流に位置するチベット高原の氷河が溶け出すことも重なり、洪水が起きやすい。ただ、この数十年は急激な経済発展に伴い、流域で乱開発が行われ、ずさんなダム、堤防の建造といった問題もあり、洪水が悪化しているとの指摘もある。

 中国政府は2018年に「応急管理省」を設立した。近年多発している自然災害や大規模事故に対応する部署で、関係部門の縦割りにより初動体制がうまく進まない弊害を解消する狙いもある。応急管理部は今回の洪水で各地の被害防止や救援活動の指示を出している。新型コロナウイルス感染症をおおむね抑制している中、新たな災害への対応が注目されている。

 洪水被害が広範囲に長期化すれば農作物や工場生産も打撃を受ける。日本への農産物や工業製品の輸出にも影響が出れば、日本にとっても対岸の火事ならぬ「対岸の洪水」ではいられなくなる。(c)東方新報/AFPBB News