【7月19日 AFP】パキスタンの裁判所は18日、同国の動物園で飼育されていた独りぼっちのゾウを、カンボジアに移送することを認める判断を下した。このゾウをめぐっては、米大物歌手のシェール(Cher)さんが動物の権利保護活動を支援していたことから注目が集まっていた。

 同国にあるイスラマバード動物園(Islamabad Zoo)で鎖につながれていたゾウのカーバン(Kaavan)には、精神疾患の症状がみられていた。カーバンの処遇をめぐって怒りの声が世界中から殺到し、鎖を外すよう求める署名活動には40万人以上の署名が集まった。

 首都イスラマバードの高等裁判所は5月、カーバンに自由を与えることを命じ、自然保護当局に「適切な保護区」を見つけるよう指示。

 18日に行われた審理で当局は、専門家委員会が隠とん先としてカンボジアにある約10万ヘクタールの野生動物保護区へカーバンを移送するよう勧告したと説明。自然保護機関「IWMB」の代表者は同日、AFPに対して「裁判所はこの提案に同意した」と述べた。

 動物園の当局者らは以前、カーバンが鎖でつながれていたことを否定し、2012年にパートナーに先立たれたため新たな相手を熱望しているのだと主張。しかしパキスタン野生動物基金(Pakistan Wildlife Foundation)のサフワン・シャハブ・アフマド(Safwan Shahab Ahmad)氏は2016年、AFPの取材に対し、カーバンがしきりに頭を動かすような苦悩を表す振る舞いをしていることから「心の病気のようなもの」の兆候を示していると話していた。

 また活動家らは、気温40度超にもなるイスラマバードの焼け付くような夏の暑さに対し、カーバンが適切に保護されていなかったと指摘。

 カーバンの苦境は歌手のシェールさんの目を引き、以降シェールさんは数年にわたりカーバンの自由を求め続けた。

 カーバンは1歳当時の1985年、スリランカからパキスタンに移された。2002年には、暴力的な傾向が強まっていることを飼育員らが懸念したことから、一時的に鎖でつながれた。

 だが激しい抗議を受け、同年中にカーバンは鎖から放たれたものの、2015年には再び毎日数時間、定期的に鎖でつながれるようになった。

 気候変動担当の首相補佐官であるマリク・アミン・アスラム(Malik Amin Aslam)氏は、当局が「このゾウを優しい心で自由にしてやり、幸せな生活を取り計らう」だろうと述べた。

 映像は18日撮影。(c)AFP