【7月18日 AFP】新型コロナウイルスが流行する中で英国の医療従事者らのために約3300万ポンド(約44億円)の寄付を集め、国民的英雄となったトム・ムーア(Tom Moore)さん(100)が17日、エリザベス女王(Queen Elizabeth II、94)からナイトの爵位を正式に授与された。

 第2次世界大戦(World War II)中にインドやミャンマーで従軍した退役軍人のムーアさんは、新型ウイルスと最前線で闘う医療従事者らのために寄付を募ろうと自宅の庭を歩行器で25メートルを100回歩くチャレンジに成功。英国の人々の心をつかみ、世界中から称賛を浴びた。

 ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相は5月、ロックダウン(都市封鎖)中に「導きの光」となったムーアさんの功績をたたえ、「ナイトの爵位」を授与すると発表していた。

 英陸軍のヨークシャー連隊(Yorkshire Regiment)はムーアさんに名誉大佐の称号を授与。さらに、歌手で俳優のマイケル・ボール(Michael Ball)さんと歌った医療従事者への応援歌は国内の音楽シングルチャートで1位を獲得した。

 この日のエリザベス女王は自主隔離を取りやめ、滞在先であるロンドン西郊のウィンザー城(Windsor Castle)の中庭で特別式典を開催。ムーアさんにとって、異例ずくめの1年で最も異例の出来事となった。

 手入れが行き届いたウィンザー城の中庭でエリザベス女王は、ダークカラーのスーツを着て歩行器を使うムーアさんや家族と懇談。「驚くほどの額の寄付金を集めてくれて、本当にありがとう」とムーアさんに語り掛けた。

 ムーアさんは式後、「非常に感激して恐縮している」「これほどの栄誉を与えられるとは、しかも女王陛下から受け取るなんて。これ以上のことを望めるだろうか」「とても素晴らしい日になった」と述べている。

 エリザベス女王が国民と対面したのは、新型ウイルスの流行を受けて公務を中断して以降初めて。(c)AFP