【7月24日 AFP】ブラジルの先住民族パタソハハハイ(Pataxo Ha-ha-hae)のアンゴホさん(53)は、昨年のダム決壊事故で被災してから、大都市のスラム街にあるコンクリート製の家で暮らしている。現在は、そこで広まりつつある新型コロナウイルスと闘っている。

 アンゴホさんは首長である夫ハヨさんとともに、主要都市の一つベロオリゾンテの郊外のスラム街で暮らしている。2部屋ある住まいは、先住民の暮らしからは遠く離れた世界だ。

 夫婦は7月初旬、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断され、伝統治療と西洋医学を組み合わせて病気と闘おうとしている。アンゴホさんは「この地区ではすでに120人の感染者がでていて、このままだと私たちの民族の中でも感染者が増える」と肩で息をしながら語った。

 パタソハハハイはもともと、同国北東部バイア(Bahia)州に暮らす、1万1000人ほどの民族。「バイア州では私たちの土地の水が地元のユーカリ農園に奪われたため、より良い生活条件を求めて土地を離れた」。アンゴホさんは呼吸がしづらいため、ゆっくりとつかえつかえ話した。

 アンゴホさんらは約20世帯の人々と共に、1000キロ以上移動し、ミナスジェライス(Minas Gerais)州のパラオペバ川(Paraopeba River)のほとりに落ち着いた。

■ダムの決壊で強いられた2度目の移動

 しかし昨年1月25日、鉄鉱石採掘世界最大手のブラジル企業バーレ(Vale)所有の大規模ダムが決壊。パタソハハハイの人々が暮らしを委ねていた川に有害廃棄物が流れこんだ。

 事故による死者は270人に及び、他数百人の暮らしが根こそぎ流された。アンゴホさんら家族はその後、ベロオリゾンテ郊外に移ることを決めた。

 アンゴホさんら家族は裁判所の決定により、バーレの補償対象となっている。しかし補償は十分ではなく、生き延びるためには寄付に頼らなければならないという。

「寄付金では生活したくありません。私たちは植物の育て方や工芸品の作り方を知っています。平和に暮らせるよう、土地を取り戻したいのです」とアンゴホさんは語った。(c)AFP/Douglas MAGNO/Paula RAMON