【7月17日 People’s Daily】張家港湾は長江が海に入る前に最後に大きく湾曲するところ。江蘇省(Jiangsu)張家港市(Zhangjiagang)の永興村(Yongxing)に住む69歳の方金付(Fang Jinfu)さんは子供のころの張家港湾を思い出す。川辺は延々と続く緑のじゅうたん。水が引けば、たくさんのカニが姿を現す。絶えることのない鳥の鳴き声…

 方さんの家は川辺にあった。夏になると、仲間と一緒に食べられる野草を摘んだり、カニを捕ったりした。だが1990年代から川辺に造船所やふ頭が建設されるようになった。村民も川辺で養殖を始めた。川辺の環境は徐々に悪化した。

 2019年後半、張家港湾の自然環境を回復しようとする動きが起きた。永興村も環境改善に乗り出した。「私が先頭に立つ」と決意した方さんは、率先して自宅の違法建築部分を取り壊した。養殖場も解体し、立ち退きの文書にも率先して署名した。張家港湾の環境改善のために、方さん一家は数十年間暮らした家を離れた。「残念だけど、これも、ふるさとをよくするためだ」と方さん。

 1年もたたずに、環境は改善され、川辺に美しい緑が戻ってきた。9キロにわたるエコ回廊や湿地の鳥類観察所なども設けられた。

 環境が改善したかどうかは鳥を見れば分かる。蘇州(Suzhou)湿地自然学校から2か月ごとに訪れる鳥類調査員の周敏軍(Zhou Minjun)さんは、張家港湾と向かい合う双山島で鳥類を観察している。4月25日のことだ。周さんは活発に動く3羽の小鳥を発見した。アシ原でじゃれ合っていた。これまでの経験から、この小鳥がカオジロダルマエナガであることが分かった。「カオジロダルマエナガは絶滅危惧種。とても環境がいいところにしかいない。ここにいるということは、ここの環境が本当によくなっていることを物語っている」と周さん。

 方さんは暇なとき、かつて自宅のあったあたりに行くのが好きだ。「アシが茂り、カニも増え、長江は再び美しくなった」という。

 川辺に緑が戻ると、周辺の村々にも新たな発展のチャンスが訪れた。永興村でも、川辺の自然の美しさを生かすことにした。

「この半年余り、村は大きく変化した」と語るのは、永興村の共産党総支部の郭春忠(Guo Chunzhong)副書記。郭氏は記者を村の出入り口まで案内した。そこには、農業体験をしたり、果物狩りをしたりできる施設があった。民宿も設けられている。長江沿岸の自然環境が改善され、それが村にチャンスをもたらした。(c)People's Daily/AFPBB News