【7月17日 AFP】長年にわたり国際オリンピック委員会(IOC)の委員を務めているカナダ人法律家のディック・パウンド(Dick Pound)氏は16日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)は、アスリートと五輪ムーブメントにとって1980年代の冷戦によるボイコット以来最大の危機であるとの認識を示した。

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 IOCの元副会長で世界反ドーピング機関(WADA)の元会長でもあるパウンド氏は、新型コロナウイルスの大流行で東京五輪が来年に延期になり、放送局や関係者、そして五輪での栄光を夢見ているアスリートが不安に陥っているとした上で、「結局のところ、公衆衛生が決定的な要因になると皆が理解している」「パンデミックは新たな戦争だ」とAFPの取材で述べた。

 アスリートが競技の機会を失う事態に遭遇するのは、米国が1980年モスクワ五輪のボイコットを呼びかけ、その報復として旧ソ連が参加拒否を指揮した1984年ロサンゼルス五輪が最後となっている。新型コロナウイルスの感染拡大は、来年の東京五輪に加えて2022年北京冬季五輪の計画も妨げる恐れがある。

「米国のモスクワ五輪ボイコット以来、このようなことは経験がない。全世代のアスリートたちが、自分の夢が『パッ』と消えてしまう状況を目の当たりにしている」「今回の方がもっと最悪かもしれない」というパウンド氏は、五輪ムーブメントが「未知の領域」に入ったとし、「考えられるすべてのシナリオを想定していたら、頭がおかしくなりそうだ」とも語った。

 新型コロナウイルスの影響で来夏の東京五輪がどうなろうとも、中国はその半年後の冬季五輪開催を見据えていくことになる。ウイルスの問題が残っていれば、大会の延期も選択肢に含まれる可能性がある。

「2022年大会を断念すると決めるまでに、何ができるのか選択肢を探っていくことだ」「これは競技団体で決められることではない。航空会社や公衆衛生当局と相談しなければならないし、満足できない状況だった場合は、中国自身が世界中から人々を受け入れる意思があるかも問題になる」

「東京で開催できれば、北京に向けて準備万端かもしれない。その逆なら、難しいかもしれない」 (c)AFP/Jim SLATER