【7月17日 AFP】(更新)英政府は16日、新型コロナウイルスのワクチン開発を進めている研究機関をサイバー攻撃の対象としているとして、ロシア政府とつながりがあるハッカー集団「APT29」(別称The DukesCozy Bear)を非難した。英ロ両国間の溝がさらに深まる恐れがある。

【図解】新型コロナ、加速するワクチン開発競争

 これを受け、米、英、カナダはロシアがワクチン研究を盗もうとしていると非難する共同セキュリティー勧告を発表した。

 英情報機関・政府通信本部(GCHQ)は、「APT29がロシア情報機関の一部だということはほぼ確実(95%以上)」だと主張。また、APT29が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン研究の情報を集めている」との「可能性が非常に高い(80~90%)」と指摘した。

 また、英政府は同日、「ロシアの関係者」が英米の間で漏えいした貿易文書を流通させて昨年の総選挙の混乱を図ったとも述べた。

 ロシアはこれらの非難を「根拠がない」とすぐに退けた。英ロは、2018年に英国でロシア人元二重スパイ、セルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏が神経剤で襲撃された暗殺未遂事件以来、対立を深めている。

 COVID-19のワクチン開発をめぐっては、英国など多くの国が臨床試験を行っているが、16日の報道によると、英オックスフォード大学(University of Oxford)の臨床試験で良好な結果が出た。

 一方、GCHQの国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は「貴重な知的財産の窃盗」を目的とした攻撃対象に複数の研究所が含まれていると明らかにした。NCSCでの運営を統括するポール・チチェスター(Paul Chichester)氏は、APT29がマルウエアなどの技術を利用し、英米およびカナダのワクチン開発研究機関を標的としていると言明。この見解を米国とカナダの当局も支持したと述べた。(c)AFP/Alice RITCHIE / Phil HAZLEWOOD