新型コロナ、胎児への母子感染「初めて確認」 仏研究
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【7月16日 AFP】母親のおなかにいる胎児への新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の母子感染が初めて確認された。フランスの医師チームが14日、母親からの感染を確認した「初の症例」について研究論文を発表した。
英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文によると、3月に生まれたこの男児には一時、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が指摘されている脳腫脹(しゅちょう)や神経系の症状がみられたという。男児はその後、回復したとされる。
論文の主執筆者で、仏パリ近郊にあるアントワーヌ・ベクレル病院(Antoine Beclere Hospital)の医師のダニエレ・デ・ルカ(Daniele De Luca)氏は、新型コロナウイルスが母親から胎児に感染する可能性があることは過去の研究でも指摘されていたとしながら、今回の研究ではその確実な証拠を初めて提供しているとした。
「妊娠の最後の数週間に胎盤を経由して母親から胎児への感染が起こり得る。今回の研究ではそれが示された」
デ・ルカ氏と研究チームは、3月上旬にアントワーヌ・ベクレル病院に入院した20代の妊婦を対象に母親と胎児の血液や羊水、胎盤などのサンプルを採取し、分析データを集めた。
今回の新生児は帝王切開で分娩(ぶんべん)されたため、胎児と感染源となる要因との接触はなく、そこからの影響は受けていない状態だった。
研究の結果、SARS-CoV-2の濃度が胎盤内で最も高いことが分かった。これについてデ・ルカ氏は「胎盤から、ウイルスは臍帯(さいたい)を通じて胎児に移動し、そこで発症する」とし、「これが感染経路だ」と説明した。
デ・ルカ氏は「悪い知らせは、この現象が実際に起きたことと、起こる可能性があることだ」と述べ、そして「良い知らせは、これがまれな現象であることだ。世界人口に比べて(その頻度は)非常に少ない」と続けた。
今回の研究には不参加だが、英オックスフォード大学(University of Oxford)のマリアン・ナイト(Marian Knight)教授(母子公衆衛生学)によると、COVID-19に感染した母親から生まれた数多くの新生児の中で、ウイルス検査で陽性となったのは全体の1~2%で、重篤な症状を示すケースはさらに少ないという。
ナイト教授は、妊婦への最も重要なメッセージは「これまで通り、手指の消毒やソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)などの対策を心がけて感染を避けることだ」と語っている。(c)AFP/Marlowe HOOD