【7月15日 Xinhua News】中国江西省(Jiangxi)では6月29日から連日降り続く豪雨の影響で、中国最大の淡水湖、鄱陽湖(Poyang Lake、ハ陽湖)の水位上昇が止まらず、8日連続で0・4メートル以上、1日最大0・65メートルという史上まれにみる上昇幅を記録した。衛星リモートセンシングデータによると、8日午後6時時点でハ陽湖本体と周辺水域の面積は4206平方キロに達し、過去10年の同時期の最大記録を更新した。

 レーダー衛星画像を使った最新の解析からは、ハ陽県(Poyang)の被災状況を一目で知ることができる。地図上で青色が示すのは新たに水没した区域、オレンジ色は水が引いて陸地があらわになった区域。ハ陽湖の水位は今後も天気の影響で数日間にわたって引き続き上昇し、水没範囲も徐々に拡大していくとみられ、洪水対策は気を抜けない状況にある。

 なぜハ陽湖に危機的状況が迫っていると言えるのか。視点を広げて江西省全体を俯瞰(ふかん)することで、その疑問に答えられるかもしれない。

 まずは江西省の地勢を確認しよう。同省は東、西、南の三方を山に囲まれ、中南部の地形は山地や丘陵などの移行地帯の特徴を示し、ハ陽湖平原は北部地域に位置する。そのためハ陽湖は省全体の中で山々に囲まれたくぼ地に当たり、水がたまりやすいことがわかる。

 ハ陽湖には同省の多くの河川が流れ込んでいる。地勢の関係上、省内のほぼ全ての主要な水系は最終的にハ陽湖に集まる。このうち修水、贛江(かんこう)、撫河(ぶが)、信江、饒河(じょうが)の五大水系はハ陽湖の主な水源で、これらの流れはハ陽湖に集まったのち、長江へと注ぎ込む。

 ハ陽湖と長江の関係について見ると、ハ陽湖には長江と接続する水の出口が1カ所しかなく、その幅は約900メートル。豪雨に見舞われるとハ陽湖の水が長江に流れ出るペースは五大水系の水がハ陽湖に流れ込むペースに追いつかなくなる。

 さらに最近は長江流域が過剰な降雨に見舞われ、上流の降雨で長江本流の水量が増加、ハ陽湖から長江への出口の水圧が上昇し、ハ陽湖から長江への流れを大きく減速させている。

 くぼ地であること、複数の河川が流れ込むこと、長江本流の水圧にぶつかることなどから、ハ陽湖は流入超過の窮地に直面し、上昇し続ける水位が再び急を告げている。

 長江の治水にとってハ陽湖はどれほど重要なのか。その疑問に答えるためカギとなるのが9%と15・5%という数字だ。

 ハ陽湖の水系の流域面積は16万2200平方キロで、江西省全土の面積の97%に相当し、長江流域面積の約9%を占める。ハ陽湖にたまって長江に注ぐ水量は年間1457億立方メートルで、長江の総水量の15・5%を占め、黄河と淮河、海河の3河川の年間水量の合計を上回っている。

 長江下流には支流が少ないため、長江が下流域に入る前の最後の貯水池であるハ陽湖の水位がこのまま上昇して下流に流れ込めば、長江下流の江淮(こうわい)平原一帯や太湖流域に甚大な被害を招きかねない。(c)Xinhua News/AFPBB News