【7月15日 AFP】マラウイで6月23日に行われた大統領選挙の再選挙で、野党候補が歴史的な当選を果たしたことを受けて、専門家や歴史家らはこれを機にアフリカの他国でも同様の民主改革が広がる可能性があると指摘している。再選挙は、2019年に行われた大統領選挙で不正行為があったとして実施された。

 再選挙では野党第1党、マラウイ会議党(MCP)のラツルス・チャクウェラ(Lazarus Chakwera)党首が、現職のピーター・ムタリカ(Peter Mutharika)大統領に大差をつけて当選した。2019年の大統領選については、裁判所が「広範囲にわたる組織的な」不正行為があったと判断し、無効とされていた。

 サハラ以南のアフリカで、大統領選挙の結果が裁判所の判断で覆されたのは2017年のケニアに次いで2例目。ケニアでも再選挙が行われたが、現職大統領が再選挙によって敗北したのは、今回のマラウイがアフリカで初となった。

 裁判は6か月に及び、その間市民らの抗議デモは拡大した。2月3日にムタリカ大統領の再選を覆すとの判決を下した憲法裁判所の判事らは、防弾ベストを着て軍の護衛を受けるという異例の対応を取った。

 歴史家のポール・ティヤンベ・ゼレザ(Paul Tiyambe Zeleza)氏は、「市民らは信用を失って窮地に陥った政府から脅しや抑圧を受けてきたにもかかわらず、彼らの票が盗まれないよう、1年間も大規模デモを我慢強く継続した」と述べた。

 さらにゼレザ氏は、再選挙の結果は、権力を振りかざす政権に、組織としてまとまった賢い野党勢力が勝利できることを見せつけたと指摘した。

 南アフリカのヨハネスブルクに本拠を置く非政府組織「アフリカにおける持続可能な民主主義のための選挙研究所」(EISA)のグラント・マスターソン(Grant Masterson)氏は、「今回の選挙は確実に今後アフリカで行われる選挙に影響を与えるだろう」と述べた。

 さらに、マラウイの再選挙は、最も穏やかな国でも市民が我慢の限界に達すれば抗議の声を上げるということを思い出させたと指摘し、「十分な数の市民が立ち上がれば、最終的に変革はもたらされる」と話した。(c)AFP/Jack McBRAMS