■UAEは2117年ごろに火星に人類のコロニー

 月へのミッションと同様、火星探査にはさまざまな国が多額の投資を行ってきたが、ビソ氏によると、各国はそれぞれの強みを生かしたニッチな分野を見つけようとしている。

 そうした中でも至高の目標は、人類の火星着陸だ。これまでのところ、米国だけが詳細な実現の可能性がある研究を行っているが、目標達成には最短でも20年はかかるだろう。

 1971年に打ち上げられたソ連の「マルス2号(Mars 2)」と「マルス3号(Mars 3)」以来、過去50年間の火星探査機ミッションはさまざまな成功を収めてきた。

 2012年に到着した米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「キュリオシティー(Curiosity)」は、火星が微生物の生命を維持できる環境だったかどうかを究明するために設計されており、2018年に到着した無人探査機「インサイト(Insight)」と共に火星の地表で活動を続けている。

 UAEは、さらに長いスパンで物事を考えている。石油産出国のUAEは、2117年ごろに火星に人類のコロニーを確立することを目標に、地球上に火星の大気状態を再現する「科学都市」を造る計画だ。

 火星上で人類の生活を支えるには、物流面で多くの課題がある。まず現在の火星は、基本的に広大な氷の砂漠だ。また、宇宙放射線から火星を守っていた濃い大気は、約35億年前に失われてしまっている。

 だが科学者らは今も、この惑星に代謝能力のある生命体が生息していたのかどうか、解明しようとしている。欧州宇宙機関(ESA)の火星探査計画「エクソマーズ(ExoMars)」の広報担当ホルヘ・バゴ(Jorge Vago)氏は、40億年前の火星表面の状態は水や濃い大気の存在など、「生命が出現したときの地球の状態に非常に近かった」と言う。

「パーシビアランス」は過去の火星探査ロボットの使命を引き継ぎ、古代に川の三角州だったとされる幅約45キロの未知のクレーター「ジェゼロ(Jezero)」の探索を行う。約60か所の着陸候補地の中から選ばれたこのクレーターには、過去の微生物の痕跡や水、炭素が含まれる堆積岩が存在する可能性がある。

「パーシビアランス」は40セットのサンプルを収集し、うち30セットを地球に持ち帰る予定だ。分析結果が出るのは、UAEの火星移住計画ほど遠大ではないが、少なくとも10年かかるという。

 映像前半は「パーシビアランス」の火星での活動を想定したアニメーション。後半は米カリフォルニア州にあるNASAのジェット推進研究所(JPL)で行われた「パーシビアランス」のさまざまなテスト、2019年撮影・一部は撮影日不明。(c)AFP/Juliette COLLEN