【7月9日 AFP】西暦1200年ごろにアメリカ先住民とポリネシア人が広大な外洋を越えて交流していたことを明らかにしたとする研究結果が8日、発表された。この交流の動かし難い証拠が、現代の人々のDNAに残されているという。

 現在のコロンビアやエクアドルにあたる地域の人々が数千キロを漂流して太平洋の真ん中に浮かぶ小さな島々にたどりついたのか、それともポリネシア人の船乗りたちが風上に向かって進出して南米大陸に到達し、その後に戻ったのかは、まだ明らかになっていない。

 だが、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文によると、欧州の人々がこれらの地域に足を踏み入れる数百年前に両者の交流が生じていたことと、これによって仏領ポリネシア(French Polynesia)の島々に住む人々にアメリカ大陸(New World)の特徴的な痕跡が残されたことは確実だという。

 古くからポリネシアの人々は、ハワイ、イースター島(Easter Island)、ニュージーランドを結ぶ三角形の広大なエリアをカヌーを使って航行・開拓したとされる。

 ただ、中世(5~15世紀)の時代にオセアニアの島民とアメリカ先住民が出会っていたかどうか、もし出会っていたとすると両者の交流がどのように展開した可能性があるのかをめぐっては、考古学者や歴史学者の間で長年にわたり激しい論争が繰り広げられてきた。

 この論争に終止符を打つため、米スタンフォード大学(Stanford University)などの研究チームは、中南米の太平洋沿岸地域に位置する15のアメリカ先住民のグループとポリネシアにある17の島で、計800人以上の遺伝子データを収集した。

「今回の研究では、全く同じ遺伝情報を含む長鎖DNA配列を探した」と、論文執筆者の一人は説明した。

 世代を重ねると、それぞれの親から受け継がれたDNAに対して、母親と父親に由来するDNAの断片が切断・結合する「再結合」が起きる。そのため、「ポリネシア人にあるアメリカ先住民のDNA小断片の長さを測ることで、何世代前に両者の交流が生じたかを推定できる」というのだ。

 この方法で推定された年代が、西暦1200年だった。

 今回の研究によって、覆される長年の通説がいくつかある。そのうちの一つは、二つの文化が文字通り顔を突き合わせた最初の場所は南太平洋のイースター島だとする説だ。イースター島はポリネシアの言葉で「ラパ・ヌイ(Rapa Nui)」と呼ばれる。(c)AFP/Marlowe HOOD