■再導入による恩恵

 経済面で最大規模の直接的恩恵は、観光産業を通じてもたらされている。

 論文の共同執筆者の一人で、カナダの観光会社「アウター・ショアーズ・エクスペディションズ(Outer Shores Expeditions)」を経営するラッセル・マーケル(Russell Markel)氏は「ラッコは極めてカリスマ性の高い動物種」と話す。

「観光客は野生のラッコが見られることをとても喜ぶ。そして重要なのは、その経験をするためにお金を投じることだ」

 論文の執筆者らの推計では、ラッコが生息していることによって得られる金銭的利益は、貝類漁業にとっての損失の約7倍になるという。

 バンクーバーアイランド大のジェーン・ワトソン(Jane Watson)教授は「多くの場合、捕食動物を再導入すると物議を醸す。その主な理由は、捕食動物と人との間で起こる資源の競合だ」と説明する。

 論文の主執筆者で、ブリティッシュコロンビア大のカイ・チャン(Kai Chan)氏は「環境中の主要な一員の消滅によって(何かしらの)干渉を受けた生態系は世界各地に無数にある。それはかつての姿の名残であり、ラッコが数十年間にわたりこの沿岸から姿を消していたのもその一つだ」と指摘した。(c)AFP/Ivan Couronne