【7月7日 CNS】中国・広東省(Guangdong)中山市(Zhongshan)にある「大象東方蝋(ろう)人形芸術体験館」創設者の周雪蓉(Zhou Xuerong)さんは、20年以上にわたりろう人形を制作してきたアーティストだ。中国における大家として、ろう人形を芸術としてさらに高め、中国の伝統文化も広めようとしている。

 ろう人形芸術体験館に入ると、英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)や芸術家のパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、中国近代画家の巨匠・斉白石(Qi Baishi)、ハイブリッド稲を開発し世界に広めた科学者・袁隆平(Yuan Longping)氏ら、世界中の著名人が時間や空間を超えて整然と並んでいる。観客は人形というフィクションが作り出すリアルな世界に引き込まれる。

 1999年からろう人形の創作を始めた周雪蓉さん。数人で始めた制作チームは今や50人を超え、生み出した人形は600体以上に達する。

 周雪蓉さんは「ろう人形には、人の心を動かす『命のぬくもり』がなければいけない。そうでなければ、ろう人形はただの標本にすぎません」と独自の哲学を語る。

 人形を制作するにはまず、本人のデータを収集し、どのようなポーズ、服装にするかを考える。制作中は型取り、彫刻、色付け、植毛など多くの過程があり、会場のレイアウトや照明との調整を含めると完成まで数か月かかるという。

 周さんはいま、「広東オペラ」ともいわれる「粤劇」をテーマにしたろう人形を制作している(粤は広東省の別称)。北京の京劇などと並ぶ中国の伝統劇だ。「広東オペラは中華の伝統文化の重要な一部です。ろう人形というハイパーリアリズムの作品を通じ、名優たちの魅力を再現したいのです」。その意欲は尽きることない。

 大象東方ろう人形館は中山市のほか、広州市(Guangzhou)、アモイ市(Xiamen)、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)ラサ市(Lhasa)、さらにマレーシア・スランゴル州にもあり、人気の観光スポットとなっている。

 ろう人形といえば、英国発祥で世界各地に分館があるマダム・タッソー館(Madame Tussaud's)が有名で、200年以上の歴史があり、そのブランドと経営力は突出している。周さんは「私たちの作品は芸術面でも技術面でも、海外トップクラスのろう人形に匹敵すると自負しています。同時に、優れた作品を参考にし、吸収しながら、中国の民族と文化の特色を反映したろう人形館を作り上げていきたい」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News