【7月8日 AFP】閣議に向かう前の早朝、南大西洋の海岸でウエットスーツに身を包み、小脇にサーフボードを抱えたウルグアイの大統領、ルイス・ラカジェポー(Luis Lacalle Pou)氏(47)の姿が撮影された。この時に撮影された写真は、新型コロナウイルス対策として同氏が推進してきた「責任ある自由」が成功しつつあることに安堵(あんど)するウルグアイ政府を象徴する一枚となった。

 ラカジェポー氏のにこやかな笑顔が国内のニューススタンドを飾った同日、欧州はコロナの影響で封鎖していた国境を15か国を対象に再開した。南米で欧州への入域規制を解かれた国は、ウルグアイだけだった。

 人口340万人のウルグアイで報告されている新型コロナ感染者数は累計でも1000人を下回っており、死者はわずか27人。世界的な健康危機の中心となっている南米で、特筆すべき例外となっている。しかも公式なロックダウン(都市封鎖)は一切行われていないため、この成功は注目に値するだろう。

■封鎖ではなく、閉鎖

 ウルグアイ当局は、ロックダウンの代わりに産業を一時停止させ、学校や国境を閉鎖させつつ、屋内にとどまり、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)を厳守するよう人々に呼び掛けた。メディアを通じて、あるいは市街地上空に警察のヘリコプターを飛ばして、家にいる市民にこのメッセージを繰り返し伝えたのだ。

 ラカジェポー氏がウルグアイ大統領に就任したのは、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の真っただ中となっていた3月初めだった。中道右派の同氏は、コロナ対策にあたって「警察国家」よりも「個人の自由」を選択すると宣言し、この自主隔離の呼び掛けに広範な層の人々が従った。

 感染症専門家のアルバロ・ガリアナ(Alvaro Galiana)氏は、ウルグアイの場合、早期の感染者追跡が功を奏したと指摘する。

「人口の中でまだウイルスの感染範囲が限られていた当時、初期のケースが広く知られることになった。大げさかと思われた対応も、結果的には適切な対策の実施につながった。ちょうど新学期の始まりでもあった」